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「しんどかったです…まだSNSがなくて良かった」大学中退→社会人野球で覚醒 野間口貴彦を襲ったプロ球団の“自由獲得枠”争奪戦「今なら悩みすぎで…」
posted2025/04/28 11:03

大学中退後は、社会人野球のシダックスで野村克也監督の薫陶を受ける。頭角を現した一方で、当時の自由獲得枠制度には翻弄されることに
text by

沢井史Fumi Sawai
photograph by
JIJI PRESS
大学中退後、19歳の暮れのこと。野間口貴彦が新たな道として歩むことを決めたのが、社会人野球のシダックス野球部だった。
入社してすぐの03年の第74回都市対抗野球大会ではいきなりエース級に活躍し、準優勝に貢献。若獅子賞も受賞し、大会優秀選手にも選ばれた。IBAFワールドカップにも出場して社会人ベストナインも受賞した。
そうしてシダックスで地位を固めていくと、プロ入りへ向けた報道が徐々に熱を帯びてきた。当時、巨人以外にも阪神、西武などが激しい争奪戦を繰り広げていた。
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連日の報道合戦の裏で、野間口はどんな思いを抱き、マウンドに立っていたのか。
「いやぁ、しんどかったですね(苦笑)。何かあればすぐに(新聞で)記事になっていましたから。当時はネットやSNSが今ほど盛んでなかったので良かったですけど、今の時代だったら悩みすぎて、心を病んでいたんじゃないですか」
「今思うと本当に大変な思いをしていたな」
シダックス2年目のシーズンもエースとしてマウンドに上がったが、実際は絶不調だった。
第22回ハーレムベースボールウィークの日本代表に選ばれるなど表舞台には立ったが、実は思うように腕が振れなかった。それでも前年の躍動がインプットされた自分を、周りは高いハードルを掲げて見てくる。見えない重圧、そして今後への不安。ストレスや余計な負荷がかかったままボールを握り続けていたのかもしれない。
「あの頃、自分はまだ21歳だったかな。そんな若い子の人生が大人の事情が絡んだ中で左右されているんですから、自分の気持ちや考えがグラグラしてしまいますよ。今思うと本当に大変な思いをしていたなって思いますね」