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「皐月賞もモレイラだ…」“単勝1.5倍”クロワデュノールはなぜ敗れたのか?「じつはミュージアムマイルにも不利があった」勝負を分けた“ある要因”
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/04/21 17:02

名手ジョアン・モレイラに導かれレースレコードで皐月賞を制したミュージアムマイル。断然人気のクロワデュノールは2着に敗れた
「引っ張らざるを得ない状況になり、そこは非常にもったいなかったです」と北村が言えば、管理する斉藤崇史調教師は「向正面でぶつけられたのが痛かった。あれがなければ勝っていたと思います」と悔しがった。立て直して動き出すときに余分なエネルギーを使わなければならないので、大きなロスだった。
じつはミュージアムマイルも不利を受けていた
これらの後ろのインコースにいたニシノエージェントが、アロヒアリイが内に斜行するのとほぼ同時に外に斜行した。それにより、外のジョバンニ、ミュージアムマイル、サトノシャイニングが、押されて接触するなどの不利を受けた。さらに、不利を受けて下がってきたクロワデュノールを避けるためジョバンニの松山弘平が手綱を引き、また外のミュージアムマイルと接触し、2頭ともバランスを崩しかける場面もあった。
そう、ミュージアムマイルも不利を受けていたのだ。しかも、2回も。それに関して、モレイラはこう振り返る。
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「なってほしくない場面もあり、ベストの状況ではありませんでした。とにかく自分の馬があまり巻き込まれないよう意識していました。コントロールしやすい馬で、これ以上(状況が)悪くならないよう指示を出したら応えてくれた。(アクシデントが)終わったあとに落ち着いてから、またリズムよく走ってくれました」
この冷静さが馬にも伝わり、馬の落ち着きにつながった部分もあったのだろう。
モレイラが称えたミュージアムマイルの“ふたつの能力”
3コーナー手前で北村はクロワデュノールを外に持ち出した。ミュージアムマイルは2馬身ほど後ろの馬群のなかにいる。
クロワデュノールは3、4コーナーを回りながら前との差を詰め、直線へ。ラスト200m地点で先頭に立ち、そのまま押し切るかに見えたが、外からミュージアムマイルが凄まじい脚で伸びてきた。
「10番の馬(クロワデュノール)はそれほど瞬発力を見せていなかった。自分のスペースができたとき、勝つ自信を持てました。先頭に立つのが思ったより早かったですが、それでも能力を見せてくれました」とモレイラ。
ミュージアムマイルは並ぶ間もなくクロワデュノールをかわし、1馬身半差をつけ、先頭でゴールを駆け抜けた。勝ちタイムの1分57秒0は、昨年の記録をコンマ1秒更新するレースレコードだった。