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「皐月賞もモレイラだ…」“単勝1.5倍”クロワデュノールはなぜ敗れたのか?「じつはミュージアムマイルにも不利があった」勝負を分けた“ある要因”
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島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/04/21 17:02

名手ジョアン・モレイラに導かれレースレコードで皐月賞を制したミュージアムマイル。断然人気のクロワデュノールは2着に敗れた
モレイラは、鞭を持った右手を軽く前に突き出した。
「今日はパドックで跨った瞬間、調教で乗ったときよりよくなっていると感じました。いいスタートを切って、前に壁をつくり、ダッシュしてから折り合えた。向正面でバランスを崩した場面を乗り越えて、直線に入って外に出してから、素晴らしい瞬発力を見せてくれました。瞬発力だけでなく、勝ちたいという馬の強い精神力によって、勝利を手にすることができました」
調教師からは「出遅れたことがあるので、スタートだけ気をつけてほしい」と言われただけで、乗り方の指示はなかったという。
思いのままに馬を動かす「マジックマン」の極意
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今回に限らず、モレイラは、ポジションを固定するのが早い。直線での進路の見つけ方は見事としか言いようがない。
また、パトロールビデオを見ると、モレイラが1コーナー手前で何度も内を確かめていることがわかる。内で何かが起こりそうな気配を感じたのか、それとも、他の騎手の声によって気づいたのか、あるいは、「自分はこうして内を見ているんだよ」と周囲にわからせて注意を喚起し、危険回避につなげようとしていたのか。
ミュージアムマイルのストロングポイントを聞かれ、「仕掛けてからの反応が素晴らしい」と応えていたが、馬を瞬時に反応させる技術があるモレイラだからこそ、それを強く感じるのだろう。
前週の桜花賞のエンブロイダリーは、自転車のハンドルを操作しているかのように自在に動かし、栄冠を手にした。軽く乗って、思いのままに馬を動かしている。まさに「マジックマン」である。
皐月賞も桜花賞も、もちろん馬自身の能力と、仕上げた関係者の尽力によるところが大きいのだが、相手陣営や、馬券を外したファンの多くは「モレイラにやられた」と感じているはずだ。