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大谷翔平も藤浪晋太郎も“勝てなかった”同い年の天才は何者か?「高校入学直前にアクシデントあった」“中学No.1投手”はなぜプロ野球を諦めたのか―2025上半期 BEST5
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/04/27 06:01

今春キャンプでの大谷翔平。中学時代、その大谷も藤浪晋太郎も勝てなかった“天才”がいた
中学生が世界大会で9回完投
16U世界選手権は9日間で8試合を戦わなければならなかった。しかも国内リーグは7イニング制であるのに対し、世界大会は9イニング制だった。
予選リーグの3戦目のキューバ戦、決勝トーナメントの初戦のメキシコ戦と、ここ一番の先発マウンドは横塚の右肩に託された。いずれも2−5、4−5と敗れたものの、最後まで1人で投げ切った。
「U16」への参加条件は文字通り16歳以下だが、日本の場合、最上級年代は高校1年生にあたるため招集は非現実的だった。そのため横塚らは実質15歳以下のチームで1つ学年が上の各国の代表と戦わなければならなかった。
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成長期のまっただ中の1年差は、想像以上に大きかった。横塚が思い出す。
「キューバにはグリエル(元横浜)の弟(ルルデス・グリエル=Dバックス)がいたんです。確か、その大会の本塁打王で。桁違いでしたね。台湾のピッチャーも150kmオーバーしていたので。150kmの球なんて見たことがなかった」
日本は8戦目のオランダとの7、8位決定戦に勝利し、7位に食い込むのが精一杯だった。
横塚の長所をもう一つ上げると、とにかくタフだった。
「キューバ戦かメキシコ戦、どっちかは179球投げてるんですよ」
明らかに投げ過ぎだったが、横塚だから何とか5点でしのぐことができた。
付け加えると、横塚がこの大会で身につけた魔球があったからこそ、世界の強豪国と何とか互角に渡り合うことができたのだ。
手に入れた魔球…強豪校の誘い殺到
大会に入り、横塚はある傾向に気づいた。
「日本人の投手を見ていると、スライダーみたいな中間速の変化球を投げる投手は打たれていて、カーブとかチェンジアップとか緩い変化球を持っているピッチャーの方が打たれていなかった。変化球はいろいろ投げられる自信があったので、日本で一度も投げたことがなかったんですけど、本番でチェンジアップを投げてみよう、って」
キューバ戦の前、ブルペンでいくつかの握りを試してみた。何通り目かのとき、人差し指と薬指で軽く挟む感じで思い切り腕を振ったら、思いのほかうまくボールが抜けてくれた。試合で実際に使ってみると、おもしろいくらいに相手のバットがくるくると回った。