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[よっさん追悼]しぶとかった小兵、吉田義男の記憶
posted2025/04/27 09:00
text by

村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph by
SANKEI SHIMBUN
「『コラァ、チビ! ええ加減にせんかい!』ってね。マウンドの上から金田正一さんが怒鳴るんですよ。当時は客入りもガラガラだから球場中に声が響き渡ってね。新人だった僕は『あれだけ打たれるとああやって怒ってもいいんだ……プロってすごいなぁ』とあっけに取られていました」
桜咲く宝塚のラウンジで、吉田義男の6歳下、同じショートの安藤統男が往時を思い出しては笑いに耽る。
安藤が阪神に入団した1962年。吉田は話すことも憚られる10年目の看板選手だった。生涯成績は打率.267、66本塁打と平凡ながら、金田からは打率.290、8本塁打。'57年サヨナラホームラン、'63年には吉田の1安打のみで0-1敗戦と血管がキレるほど相性の良さを見せたのは、吉田の打撃を語る上で欠かせない。
「吉田さんは高めの速い球に強かった。広角にも打てるけど、インコースもパッとバットを出して簡単にレフト前やセンター前。よう打つんですよ。金田さんは僕らみたいな小兵には速い球で押したい。だから打たれても打たれても投げてくるんだけど、同じように簡単に打たれてしまうから『コラァ!』ってね(笑)」
身長167cmの吉田にとって、17cm上の金田の2階から投げ下ろすかのような剛速球は、ちょうど好きな高さの絶好球。さらにムキになって同じ所へ投げてくる金田の性格を見越して、吉田はバットを合わせてまたヒット。金田は引退後のOB戦でも吉田にホームランを打たれ「顔も見たくない」と生涯苦手とし続けた。
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