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酷評された“謎采配”も「じつは意図があった」山下大輔が明かす“暗黒期ベイスターズ”の真実「村田修一を叱った日」「ウッズのバントが唯一の後悔」
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村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byJIJI PRESS
posted2025/04/22 11:06

2004年8月、東京ドームのベンチで厳しい表情を浮かべる横浜ベイスターズの山下大輔監督
「基本的にはやっぱりメジャーリーグの野球が好きだね。初回からバントをするのは好きじゃない。打って打って点を取るっていう、そういう野球の方が子供でも見ていて楽しいじゃないですか。僕は“童心”という言葉が好きなんだけど、選手にも、ある意味で少年野球じゃないけど、たとえ勝てなくても『思い切り振ってこい』っていう気持ちで野球をやってほしいな」
――それは、もう大ちゃんス打線ですね。
「去年のドジャースやヤンキースみたいに選手ひとりひとりが圧倒的な力を持っていて、自然につながるようになればいいんだけどね。ただ、いずれピッチクロックなんかも日本に入ってくるんだと思うけど、ピッチャー交代に焦らしを入れたりとかね、姑息というと悪いけども、そういう野球はあんまりしたくないね」
「一軍の監督としてはヘボ。でも後悔してない」
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――正々堂々、正面から力と力でぶつかる。貴族のような高潔な精神ですね。
「野村克也さんは『弱者には弱者の戦い方がある』と言ったけど、僕もある意味、“弱者の戦い方”ではあったんです。弱者として、大砲と将来のある選手がいたので、それを最も活かせる野球。村田の2年目、ヤクルト戦無死一・二塁の場面で、コーチの田代(富雄)が『バントさせましょう』と言ったんだけど、僕が『NO!』と強行させて結果ゲッツー。痛い負けを喫したことがありました。でも、村田には将来なってほしい選手としての姿があった。本人がどう思ったかはわからないけど、自分がどういうバッターで何を期待されているのかということを理解してほしかったんですよ。プロ野球選手は自分の長所を知らなければいけませんからね。まぁ、監督としては、一軍の試合なんだから勝たなければいけないんだけどね(笑)」
――野村克也は弱者の戦い方として「己の短所を知れ」と言いましたが、山下さんはまったく逆の論理で弱者の戦い方を説いています。でもそれは、数年後に選手の成長があるとしても、勝てなければ責任は監督が取ることになります。なかなかできることじゃありませんよ。
「だからね、村田のゲッツーにしても、一軍の監督としてはヘボなんだけどね。でもやったことに対して自分はあんまり後悔はしていない。いや、あんまりじゃなくてまったく後悔していないですね。唯一、後悔があるのはね、タイロン・ウッズのバントですよ」