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ホンダ、ヤマハに復調の気配…試行錯誤の末たどり着いた「エンジンの遅さ」とは? カタールGP4位のザルコは「着実に前進している」
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/04/17 11:03

4戦を終え、ドゥカテイ勢以外では最高位となるランク6位につけるザルコ
加速、最高速に勝るドゥカティ、アプリリア、KTM勢に対抗するためにエンジンの回転数を上げてパワーを上げた結果、エンジンのフィーリングが変わり、ハンドリングの良さが失われた。それを改善するための試行錯誤がようやく実を結びつつあり、今季はなんとかシングルフィニッシュの常連にこぎつけたのだ。21〜22年のパフォーマンスにはまだまだ届いていないが、ホンダ同様、どん底から這い上がってきたことを感じさせている。
それにしても興味深いのは、ホンダはありあまるパワーに苦戦、ヤマハはパワーを上げたことでマシンのバランスを失い、それを是正するために多くの時間を要したこと。この数年、エアロばかりが注目されるが、結局MotoGPマシンに求められるのは「乗りやすいバイクを実現するエンジン」に尽きるのではないだろうか。
グランプリはタイ、アルゼンチン、アメリカ、カタールと続いた大陸移動がひとまず終わり、ヨーロッパラウンドに入る。その初戦となる第5戦スペインGPの舞台はクアルタラロが得意とするヘレスである。過去2年はまったくいいところなしの10位と15位だったが、今季のレース結果は今後を占うことになりそうだ。
完全復活をかけるエンジン開発
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そして、ここに来て大きな話題は、ヤマハがいよいよV4エンジンでテストを開始するということ。5メーカー中4メーカーがV型4気筒エンジンを搭載するMotoGPクラスで、唯一、直列4気筒エンジンを採用してきたヤマハが、しばらくは2種類のエンジンの開発を続けながら実戦に挑む。
27年から、MotoGPクラスは速すぎる1000ccのスピードを落とすため、排気量を850ccに下げる。ヤマハにとっては直4とV4のどちらがいいかを見極めるための先行テストになる訳だが、V4をモノにするにはそれなりの時間が必要になるし、ヤマハのスタッフも「そう簡単ではない」と語る。直4とV4を並行して開発するのは人材を分散させ、かつコストも増大するわけで、ヤマハは復活に向けて大きな勝負に出ることになる。
復活の気配が漂いはじめたホンダとヤマハは、スペインGPからのヨーロッパラウンドでどんな戦いを見せてくれるのか。今季こそは期待してレースを待ちたい。
