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「脱落者ゼロ」も「最初は行きたくなかった…」全国ベスト4強豪校が“ナゾの自衛隊特訓”…部員150人を抱えるサッカー部監督の狙いは? 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2025/04/08 11:01

「脱落者ゼロ」も「最初は行きたくなかった…」全国ベスト4強豪校が“ナゾの自衛隊特訓”…部員150人を抱えるサッカー部監督の狙いは?<Number Web> photograph by Takahito Ando

自衛隊の訓練に体験入隊した高川学園高校サッカー部

 江本監督は、これまでも柔軟な発想と指導力で選手たちの社会性を高める活動を行ってきた。その一つが自発的な行動を促す『部署制度』だ。部内に分析部やグラウンド部といった役割を設け、それぞれの自立を促し、それはサッカーに関するものにとどまらず、農業部やおもてなし部など地域貢献・交流や物づくりにまでおよぶ。

 実はサッカー部の自衛隊体験入隊は今回が3回目で、初回は選手権ベスト4進出を果たした直後の2022年1月。きっかけは学校の進路課に届いた自衛隊の隊員募集だったという。

 興味を抱いた江本監督はすぐに自衛隊関係者とコンタクトを取った。

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「新チームの立ち上がりの時期だったので、チームとしての統一感を保つために、何かしら一つのことをみんなで成し遂げる、やり遂げるという経験をサッカー以外のところからアプローチしようと。部署活動などを通じて主体性、当事者意識をもってやることの大切さを伝えてきましたが、それだとどうしても内部に向けたやりとりや発信が多くなる。外の人から『それって大事だよ』と教えてもらうことで、選手たちがより刺激と自覚を持つと思ったので決めました」

 1回目はコロナ禍の影響で参加は10人程度、2回目は18名の参加に留まったが、今回は中国高校サッカー新人大会を控えるトップチーム30名を除く部員80名が参加する運びになった。

脱落者ゼロに自衛官も驚き

 午前中はグループに分かれ、行進を中心とした団体行動。午後は匍匐前進や担架での負傷者搬送や土嚢を運ぶなど実践型トレーニング、通称CCD訓練(コンバット・コンディショニング・ドリル)をこなした。

 部員同士で鼓舞しながら、それぞれの限界に挑み、ひとりの脱落者も出さずにメニューを完遂した。

「さまざまな経験を通して成長してほしい」と受け入れた自衛隊側も、高校生たちの意識の変化とやり遂げる力に驚き、新鮮だったと振り返る。

「日々しっかりと体力、礼儀の両面で鍛えられていると感じました。80人、ほとんどが意欲を持って率先して取り組んでいた姿は大きな刺激と学びになりました」(山口駐屯地・金子さん)

 再び3台のバスで学校に戻った彼らは、トップチームが待つグラウンドに合流。トレーニングのおさらいをキビキビとこなしたのだから驚かされる。長い長い1日を終えた部員に感想を問うと、受け止め方はさまざまだった。

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