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「璃来ちゃんと出会って…」演技直後、三浦は木原の頭をポンポンと撫でた…りくりゅう“2年ぶりの世界選手権優勝”の裏で取り戻した「新鮮な気持ち」

posted2025/04/02 11:00

 
「璃来ちゃんと出会って…」演技直後、三浦は木原の頭をポンポンと撫でた…りくりゅう“2年ぶりの世界選手権優勝”の裏で取り戻した「新鮮な気持ち」<Number Web> photograph by Getty Images

世界選手権で2年ぶりの優勝を果たした三浦璃来・木原龍一

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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 3月25日に開幕した、2025年ボストン世界選手権。SP1位でフリーに臨んだ三浦璃来と木原龍一は「アディオス」を大きなミスなく滑り終えた。木原は力を出し切ったかのように膝に手を置き、その彼の頭を三浦が労わるようにポンポンと撫でた。

 2万人の観客の止まない声援と拍手に応えた後、真剣な表情で得点を待った。フリーはドイツに次いで2位、総合1位という結果が出ると、三浦は両手で顔を覆い歓声をあげた。涙で歪んだ顔の木原とブルーノ・マルコットコーチの3人で、しっかりとハグをし合う。2年ぶり、2度目の世界タイトルだった。

「1度目に優勝した時は、本当に素直に『ただ嬉しい』だったんですけど、この2年間、怪我であったり、たくさんの苦労、うまくいかないことがあった中で、優勝することができて、本当に色んな感情が混ざり合って……それでもやっぱり嬉しいです」

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 三浦は記者会見でそう笑顔でコメントした。彼女が言ったように、「りくりゅう」の過去2シーズンは波乱に満ちていた。

 2023年に初めて世界の頂点に立った翌シーズン、木原が腰椎分離症が判明してGPシリーズを欠場。2024年モントリオール世界選手権は2位だったが、木原が試合後に喘息の発作で倒れて病院に運ばれ表彰式を欠席するという予想外の事態も起きた。

りくりゅうの表情に変化が見えた理由

 イメージを一新したプログラムで挑んだ今季はスケートアメリカで優勝するも、期待されたNHK杯ではミスが出て2位に終わる。進出したGPファイナルで銀メダルを手にしたが2人に笑顔はなく、木原は「(自分たちの演技が)はっきり言って話にならないレベル」と悔し涙を見せた。全日本選手権では圧勝するも、彼ららしくないミスもあった。

 これまでとは全くタイプの違うプログラムが負担になっているのか。あるいは公表していない体調不良があるのか。2人の持ち前の明るさが、大会ごとにすり減っていくかのようだった。

 だがこのボストンでは、前日の公式練習時から2人の表情は何か憑き物が落ちたかのように、すっきりと明るかった。目に光が戻り、肌のつやも顔色も内側から光が射しているかのように見えた。

「変化が起きたのは、全日本が終わってからでした」とマルコットコーチは説明する。コーチから見ても、シーズン前半の2人は自分たちを追い込みすぎているように見えたのだという。

「もちろんタイトルを競う位置にいるのはプレッシャーです。でも組み始めた時の気持ちを思い出して、トップを争う機会があることを楽しむようにしてはどうか、と話したんです」。全日本後に日本でしばらく休養したことは、2人に必要な時間だった、とマルコットコーチ。

「あまり根を詰め過ぎずに、スケート以外のことをやることが気分転換になったのだと思うんです」

【次ページ】 「好きなスケートのはずなのに、なんでつらくなって…」

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