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「何歳までやる、みたいな意地はない」長野五輪あの金メダリスト(49歳)の現在…「スポンサー数は5分の1に減少」でも船木和喜が現役を続ける理由
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byWataru Sato
posted2025/03/04 11:01

今年4月に50歳の誕生日を迎える船木和喜。現役選手として競技を続ける現在を聞いた
「何歳までやるんだ、みたいな意地はまったくない」
輝かしい経歴を築いたジャンパーは、今なお、国内大会に出場を続け、現役生活を送っている。葛西紀明をはじめ、ジャンプの世界には長年活躍する選手がいるとはいえ、それにしても驚くべきキャリアの長さだ。
世界を席巻した頃と比べれば、成績が下がっているのは否めない。今日では海外遠征メンバーに入れず国内の大会への出場に限られる。
ジャンプに限らず、トップアスリートの多くが引退を決意する理由の多くは、成績だ。どうにも勝てなくなり、やがて区切りをつける。
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しかし船木は飛び続けている。
「長野オリンピックが終わってから、所属先だったデサントをやめて独立をしたんですよ。ただ、当時の連盟はプロを認めていなかったので、どこかの企業に所属している選手でないと選手登録ができない。すると国内大会も国際大会も出れない。そこで急きょ自分の会社を作って、社員として競技を続ける形をとりました。スポンサーを募って活動費を捻出していましたが、現在もスポンサーがいますから続けています。スポンサーがなくなれば僕は辞めようと思ってるんですよ。何歳までやるんだ、みたいな意地はまったくないです」
スポンサーは現在4社…年収減少でも現役を続ける理由
支援してくれる人々がいたとしても、競技を続ければストイックに練習にも取り組まなければならないし、結果としてその成果が表れなければ、続けるのが苦しくなっても不思議はない。
すると船木は言う。
「スポンサーの数自体は多かった頃の20社から4社に減少しています。年収も下がってきて、費用的なものも考えると辞めるのがふつうなんですけど、結果も出ていない僕を支援してくれるってすごいことだと思う。それに応えようというのが競技を続ける理由の基本、柱ですね。応援してくださる方がいなければ飛ぶ必要はないなって思っています」
そして「嫌なことばっかりですよ」と笑う。
「やっぱり結果が出ていないですからね。でも、応援してくださる方の熱量が僕より勝っているってことじゃないですかね。それに応えたくなる自分がいます。もう試合に出たくないなって思うことはありますよ。やっぱり結果が出なくて思うようにいかなければそう思ったりします。ただ、そのときは飛距離が出ないというのが課題になってくるわけですね。勝っている選手との差があるということなので、それを埋める作業をするのは選手として当たり前のことです。自分への可能性や期待も持っていますから」
応援してくれる人々がいて、それに応えたいという思い。今も消えない自分の可能性への信念。