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日本一から一転→西武会長から“ある電話”…激動期のライオンズを率いた伊東勤の告白「フロントとの関係がこじれて…」監督退任に“2つの事実” 

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伊東勤

伊東勤Tsutomu Ito

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posted2025/03/01 11:02

日本一から一転→西武会長から“ある電話”…激動期のライオンズを率いた伊東勤の告白「フロントとの関係がこじれて…」監督退任に“2つの事実”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2007年、シーズン限りでの退任を表明した西武の伊東勤監督

 シーズン最終戦で、対戦相手のソフトバンク・王監督から花束を贈呈していただき、試合後には退任の記者会見も開いていただき、円満な退団に見えるよう努めましたが、実際は決してそういうわけではありませんでした。

「監督は、根っこの部分で孤独」

 実際に監督をやってみて、プロ野球の監督にはたくさんの資質が求められるというのを実感しました。

 監督は現場のトップですから、「組織の運営者」でなければなりません。現場で起きることはすべて監督の責任です。といっても、なんでも自分ひとりでできるわけではないので、コーチングスタッフに権限を移譲して仕事を任せる必要があります。そのためには、意思を共有するためのコミュニケーションが重要です。

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 チームの戦力を整えるのは主にフロント(編成)の仕事ですが、与えられた戦力が力を発揮できるように強化したり、故障などにより穴があかないよう、シーズンを通した危機管理を行う「マネージャー」でなければなりません。

 チームの状態が悪くなったときや、大事な試合に向けて気持ちを鼓舞する「モチベーター」の資質を生かす監督もいますし、戦う軍団を結束させ、率いていく「リーダー」タイプの監督もいます。

 さらに日本のプロ野球の場合は、現役時代の人気という資質も、観客数を増やすために重視されているように思います。

 監督に必要な資質は数々ありますが、私が最も重要な資質だと考えるのは、「コマンダー」として「即断即決」することです。

 勝負の大半は戦力で決まります。しかし、試合中に選択する戦術によって状況を変えられる部分も決して小さくありません。投手交代の人選とタイミング、攻撃での作戦、守備での作戦、代打や代走の人選とタイミングなど、1試合の中でも監督が決断すべき選択肢は非常にたくさんあります。

 判断するための情報提供や推薦までは、コーチたちの協力もあります。しかし、必要なタイミングに遅れることなく、どの選択肢を採用するか決断するのは監督です。

 その決断が正しかったかどうかの答え合わせは、その試合中すぐに出ます。それをコーチたちも、選手たちも見ていて、「正答率」が高ければうちの監督は強いという求心力になっていきますし、低ければチームメンバーの心が離れていきます。

 だから監督は、根っこの部分で孤独です。それが受け入れられなければ、とても務まりません。最終回に続く》

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#3に続く
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