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「正直、あの4年間は地獄でした」なぜ箱根駅伝で“山の神”柏原竜二に勝てたのか? 渡辺康幸の早稲田大“21秒差で優勝”の真実「自慢にもなりませんよ」

posted2025/02/06 11:20

 
「正直、あの4年間は地獄でした」なぜ箱根駅伝で“山の神”柏原竜二に勝てたのか? 渡辺康幸の早稲田大“21秒差で優勝”の真実「自慢にもなりませんよ」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「山上りのスペシャリスト」は不在ながら、2011年の箱根駅伝で早稲田大学を優勝に導いた渡辺康幸監督

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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「山を制すものは箱根を制す」の格言を体現するように、近年の箱根駅伝では5区に山のスペシャリストを配置した大学の強さが際立っている。果たして、山特化型ランナーを起用することなく箱根路を制することはできるのか。“山の神”柏原竜二を擁した東洋大を相手に、2011年の箱根駅伝で早稲田大学を総合優勝に導いた渡辺康幸氏に話を聞いた。(NumberWebインタビュー全2回の1回目/後編へ)※文中敬称略

“山の神”に粉砕された「4分58秒のリード」

 101回目の箱根駅伝は、山区間にスペシャリストを配した青山学院大が、圧倒的な強さで2連覇を達成。5区の若林宏樹、6区の野村昭夢がともに区間新記録をマークしたのは記憶に新しい。

 山を制すものは箱根を制す――。いつの時代もよく聞くフレーズではあるが、過去にこの格言を覆したチームもある。いまから14年前、“山の神”の異名を取る柏原竜二を擁した東洋大の3連覇を阻止し、学生三大駅伝3冠を成し遂げた2011年の早稲田大もその一つだった。

 当時、監督就任7年目の渡辺康幸(現住友電工監督)は、自身の進退を懸けるつもりで箱根駅伝に臨んでいた。後にマラソン日本代表として2大会連続で五輪に出場する大迫傑ら世代屈指のランナーが入学し、往路、復路ともに戦力はこれまでにないほど充実。今年度こそは絶対に勝たないといけないと思っていたという。

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「本当はその2大会前、竹澤健介(北京五輪出場)がいたときに総合優勝しないといけなかったんです。あの年は4区終了時点で、余裕で逃げ切れると思っていました。すると、東洋大の当時1年生だった柏原君に5区で4分58秒差をひっくり返されて……。もうびっくりでしたよ。勝てるレースを落としてしまいました。そこであらためて、山の重要性を思い知らされたんです。山上りで痛い目にあい、そこから柏原君を倒すためのチーム作りが始まるわけです」

 ただ、山のエキスパートを育成するのは想像以上に難しかった。1年前から準備を進め、夏以降は実戦に近い模擬練習を積んでも、“山の神”に対抗するクライマーを育てることはできなかったという。86回大会は5区に抜擢した八木優樹が真っ向勝負を挑んで失敗。その反省を生かし、87回大会は特殊区間を1セットで考えることにしたのだ。

【次ページ】 「5区の柏原君は“敬遠”ですよ。怪獣なんで」

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