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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「正直、あの4年間は地獄でした」なぜ箱根駅伝で“山の神”柏原竜二に勝てたのか? 渡辺康幸の早稲田大“21秒差で優勝”の真実「自慢にもなりませんよ」
text by

杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJIJI PRESS
posted2025/02/06 11:20

「山上りのスペシャリスト」は不在ながら、2011年の箱根駅伝で早稲田大学を優勝に導いた渡辺康幸監督
「正直、東洋大に柏原君のいた4年間は地獄でした」
それでも、2011年の勝ち方は他の参考にならないという。山をしのいで勝つ方程式などはないのだ。15年まで早稲田大を率いた後、翌年以降は実業団の監督を務めながらテレビ解説者として箱根駅伝を見続ける渡辺は、シビアな現実を口にする。
「2011年はイレギュラーと思ってもらった方がいい。たまたま勝てただけです。自慢にもなりませんよ。スペシャリストがいれば、もっと楽に勝てたと思います。正直、東洋大に柏原君のいた4年間は地獄でした。彼のおかげで2回ほど優勝を逃していますし、私のトラウマ。いまは仲がいいですが(笑)。山区間の重要性は年々増しています。93回大会以降、5区の区間距離が23.2kmから20.8kmに短縮されましたが、山をないがしろにして、勝てるほど箱根は甘くない。山上りに強い選手がいれば、より一層優勝に近づくことに昔もいまも変わりはないです」
2015年の91回大会以降、11年の間で8回の総合優勝を誇る青山学院大は、まさにその代表例。山区間の強さには定評があり、一定のサイクルで専門ランナーに近い選手を育てて勝利を手繰り寄せている。一方で、陸上選手としての将来を考えれば、山に特化した選手の育成に賛否両論あるのも事実。現在、実業団で指導する渡辺に箱根駅伝後の問題について水を向けると、神妙な表情で口を開いた。
<続く>
