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「悪形だが…藤井の金が有効に」なぜ永瀬拓矢32歳は評価値リードも「指しやすい局面がなく」藤井聡太22歳に屈したか〈王将戦・元A級棋士の視点〉
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2025/01/16 06:01
藤井聡太七冠に永瀬拓矢九段が挑む王将戦。第1局は静岡県掛川市で開催された
永瀬は藤井の飛車を取り、馬(成角)を敵陣に利かしたが、攻めが一時的に止まった。藤井はその間隙を縫って桂香を中段に打ち、反撃に転じると攻守が入れ替わった。永瀬は懸命に受けたが、藤井の着実な寄せに抗しきれなかった。
永瀬は積極的な手法でリードしたが、藤井の懐の深さに攻めあぐんで押し切れなかった。王将戦第1局は藤井が112手で勝った。終局時間は19時5分。残り時間は永瀬3分、藤井2分。
「序盤の細かなところに少し課題が残った」
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こう語った藤井に対して、永瀬は藤井とのタイトル戦の先手番の対局で、またも敗れて7連敗。こうコメントを残している。
「次局では競り合いになる展開にしたい」
「壁金」は悪形だが、指し手が進むにつれて…
序盤の部分図の局面を第1図にて示すが(※外部配信サイトでご覧の方は関連記事よりご覧ください)、永瀬の1筋端攻めに△2二金と藤井が寄って受けたところ。これは「壁金」と呼ばれる悪形である。しかし指し手が進むにつれて、金は1筋から3筋へと移動しながら永瀬の香をとりつつ、4四(後に△2三角の王手が痛打)→5四(●印)とする一手は永瀬の桂を取る決め手となった。
つまり藤井の勝利の陰の主役は――地味だが、金の有効な動きにあった。
藤井は王将戦4連覇に向けて好発進した。翌朝のスポーツニッポンには恒例の「勝利者コスプレ」として、巳年にちなんで大ヘビのぬいぐるみを体に巻き付け、インドのヘビ使いのようにターバンを頭に巻いて笛を吹いた藤井の写真が載った。
なお藤井が王将戦であと3勝して防衛し、2月に始まる第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(藤井棋王−増田康宏八段)で3勝して防衛すれば、タイトル戦での勝利数が大台を超える101勝となる。
王将戦第2局は1月25、26日に京都府京都市「伏見稲荷大社」で行われる。〈将棋特集:つづく〉