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藤井聡太21歳“36分の一手”は「コンピューター思考終了まで1時間以上かけても、最善手」高見泰地七段が驚く「冴えに冴えた藤井将棋」とは
posted2023/08/15 11:01
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Keiji Ishikawa
将棋界にとって、初夏から夏にかけてのタイトル戦と言えば……棋聖戦と王位戦だ。日本と世界全体がコロナ禍で鬱屈としていた2020年のこと、当時17~18歳だった藤井が鮮烈な戦いぶりで最年少二冠へと駆け上がっていくストーリーを見て、将棋の魅力にのめりこんだファンも多い。
そこから3年、数々の最年少記録を樹立していった藤井は2023年夏――佐々木大地七段を挑戦者に迎えた棋聖戦では3勝1敗で4連覇を成し遂げ、王位4連覇も「あと1勝」としている。さらに8月末開幕の王座戦でも挑戦者となり「八冠ロード」に世間は注目することになるだろう。
高見泰地七段は10代の頃から公私にわたって佐々木と付き合いがある。さらに愛知県豊田市で開催された王位戦第1局の副立会人、藤井が最年少名人となった名人戦第5局でも朝日副立会人を務めるなど、藤井将棋を間近で見ている。現場の空気感を含めて、このダブルタイトル戦での藤井将棋についてどう感じ取ったかを聞いていこう。
封じ手辺りまでは後手の佐々木七段を持ちたい、と思ったが
――副立会人を務めた王位戦第1局、どのような印象だったでしょうか?
高見 藤井さんは棋聖戦で佐々木七段の挑戦を受けている状況で、王位戦が開幕しました。対局相手は同じですが、王位戦は2日制で持ち時間は8時間(棋聖戦は1日制で持ち時間4時間)。どのように両者が戦っていくかを注目してみていました。もともと佐々木七段は長時間の対局に強い、地力があるタイプです。実際に対局が始まってみると、持ち時間に臆することなく封じ手辺りまではどちらかというと後手を持ちたいという局面でした。
――どのあたりで「後手を持ちたい」と感じたのでしょうか。