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「これはまずい」学生の朝帰り、だらけた雰囲気…それでも青学大・原晋監督が見逃さなかった“ある変化”「今の生活を変えたい」選手が宣言した日
text by
原美穂Miho Hara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/03 06:01
2015年、初めての箱根総合優勝を達成した際の原晋監督
監督は学生の変化を見逃しませんでした
だからこそ、彼らの心に火がついたのだと思います。さらに厳しいルールが必要だという声が自然とわき上がりました。箱根駅伝に出られるならどんな努力でもしたい、それが必要なら厳しいルールも守りたい、と意識が変わったのです。
監督はその変化を見逃しませんでした。
6時に寮の前に集合して朝練へ出発(現在は5時半に市民球場集合と、さらに早くなっています)。夜は10時が門限で、食事は一緒に食べる、部屋での飲酒や茶髪、ギャンブルは禁止といったルールが、監督と学生の合意の下で決まったのは、寮生活が始まって、ほぼ1年がたってからのことでした。
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一般の大学生と比べると、かなり厳しいルールです。正直に言えば、音を上げる子もいました。でも、勝つためにはどんなことでもしたい、厳しいルールも守りたいと思った子たちは、歯を食いしばってそれを守りました。自分たちで決めたルールなのだからという思いもあったでしょう。頭ごなしにあれをしなさい、これをしなさいと言わず、彼らに任せてよかったなと思いました。
もし、わたしがしびれを切らして、学生に生活態度のあれこれをガミガミと注意していたら、どうなっていたでしょう。素直に聞かないばかりか、反発する気持ちを抱く学生もいたでしょう。
同じように会社や家庭でも、部下や子どもにいろいろと言いたくなる場面がたくさんあると思います。でも、自分で気づかない限り、人はなかなか変わらないもの。ぐっとこらえて、見守ることが必要かもしれません。そして、気づいたかな、というときには、一気に背中を押してあげることが大切だと思います。《第3回に続く》