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「寮のルールを守らないどころか…」青学大が学生を「記録優先」でスカウトしていた頃…原晋監督と妻が“箱根駅伝”予選会惨敗で考えたこと
posted2024/01/03 06:01
text by
原美穂Hara Miho
photograph by
JIJI PRESS
今年も箱根駅伝が開幕する。前回大会で駒澤大に王座を明け渡した青山学院大は、どのような逆襲の走りを見せるだろうか。
原晋監督、そして学生たちを支えるのが、寮母を務める原美穂さんだ。寮母という立場から青学の強さの秘密を解き明かす、原美穂さん著『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)から、「監督就任3年目の苦悩とスカウティング」に関する章を抜粋して紹介します(全3回の2回目/#3につづく)。
◆◆◆
3年契約で就任した監督が率いた青山学院大学陸上競技部は、最初の予選会で16位、翌年は13位、その翌年は16位という結果に終わり、3年続けて本選出場を果たすことはできませんでした。監督はこのまま契約が解除されるのが既定路線でした。
ただ、3年目の予選会での敗退が決まったとき、わたしが最初にしたことは、新しい職を探すことでも、広島へ帰るために荷物をまとめることでもありませんでした。やったのは、監督を焚きつけることでした。
「もう1年、やらせてもらえるように大学に頼んで。土下座してでも!」
寮のルールを守らないどころか、周りに悪影響を…
最終年の16位という順位は、決して期待していたようなものではありませんでした。もっと上を目指していたはずなのに、前年よりも順位を落としてしまったその最大の理由は、寮、つまり部内がだいぶがたついていたことにあると思います。
この年がラストイヤーになると思っていた監督は、前年、高校生のスカウティングの方針を変えていました。それまでは記録もさることながら人間性をかなり重視してスカウティングをしていたのですが、その年は、とにかく結果を出そうと、人間性は後回しにし、記録優先で高校生を集めたのです。そこには、監督が旧知の高校の先生からは「あの子は採らないほうがいい」と言われた子も含まれていました。それでも監督は、その子も箱根駅伝には出たいだろうから、きっと生活を改めるだろうと期待、いえ、信じたようです。
ところが、それが裏目に出ました。