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「やりたくないならプレーしなくていい」→「彼はわかっている」…今ではコーチも絶賛 バスケ代表・比江島慎(34歳)が“ドン底評価”を覆せたワケ
posted2025/01/11 11:05
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
JIJI PRESS
「もう代表でプレーしたくないのなら、やらなくていいよ!」
2021年11月27日、東京五輪後初めての公式戦となった中国との試合。29-45と16点もリードされて迎えたハーフタイムに、トム・ホーバス新HC(ヘッドコーチ)が声を張り上げた。その視線の先にいたのは、この時点で10年にわたって日本代表を引っ張ってきていた比江島慎だった。
比江島は答えた。
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「もう1回、やらせてください!」
口調は丁寧だったが、心には火がついていた。
「僕からしたら一生懸命プレーしていたので『え?』という感じでした(笑)。多分、僕の負けず嫌いの性格が働いたんでしょうね。トムさんに対しても、負けたままで終わりたくない。そういう感情がメラメラと燃え上がっていました」
コーチは中国戦を見て「終わった」と感じた
このハーフタイム以降、比江島がそれまでと同じように日本代表で欠かせない存在となっていったのは言うまでもない。
ホーバスHCの著書『スーパーチームをつくる!』(日経BP)では、当時の心境が以下のようにつづられている。
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私は代表のユニフォームを着て『やりたい』という気持ちのある選手を招集したのですが、この中国戦の前半での出来を見て、私は彼が『終わった』と感じました。それでハーフタイムに全員の前で、彼に向けて『もうやりたくないならプレーしなくてもいい』と厳しい言葉をなげかけました。すると彼は私を見て『やりたい』と言ったのです(中略)。実際、比江島選手はその試合の後半でも、その次の試合でも良いプレーを見せてくれました。
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比江島はあのハーフタイムについて、こう振り返る。
「僕は当時、気持ちを前面に出すタイプではなかったので。自分の中ではもちろん全力でやっているつもりでしたけど、トムさんからしたら『全力でやっているようには見えないし、求めているレベルに達していない』という感じだったのでしょうね。それに、あの時点で、僕は本来の力を出せていなかったですから。ああやって言われて嫌だったわけでもないし、ショックとかもなかったんです」