第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
「勢力図を変えるのも僕のミッション」全日本大学駅伝で二冠達成の國學院大學・前田康弘監督は一戦必勝で箱根駅伝に挑む
posted2024/11/14 10:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Shota Matsumoto
一戦必勝の構えで、ふたつの駅伝を制した。
先月の出雲駅伝に続き、全日本大学駅伝で大学駅伝二冠を達成すると、國學院大學の前田康弘監督は喜びを噛みしめるようにこう話した。
「國學院というと、長い距離が得意で安定している。そんなイメージを持たれていて、じつはそれが悔しかったんです。どこかでそれをぶっ壊したいと思っていて、それができるのが今年のチームだと。なので今回、(箱根駅伝よりも区間距離の短い駅伝を)勝ち切れたことが素直に嬉しいです」
「ただし」と言って、表情を引き締め直す。
「この秒差を見ても、今年は駒澤さん、青学さんとの力の差はほとんどありません。最後まで本当に(勝てるかどうか)わからなかったですから」
レースはまさに、最後まで目が離せない白熱の展開だった。
序盤にまず、リードを奪ったのは青山学院大学だ。前日に原晋監督が「一番期待してるのは鶴川」と話していたように、三本柱のひとりである鶴川正也(4年)が2区で区間賞を獲得。創価大学の吉田響(4年)と高い次元で競り合い、3位以下の大学から大きなリードを奪った。
中盤の4区ではやはりエース格の黒田朝日(3年)が区間新記録の快走。4区終了時点で3位の國學院大とは1分27秒差、大会5連覇に挑んだ駒澤大学には2分25秒もの大差をつけた。
原監督は「2区と4区が終わった時点で一度は勝ち筋が見えた」と話していたが、序盤にリードを奪って「先行利得で余裕を持って走らせる」のは青学大のこれまでの必勝パターンである。
波乱の展開に封じられた青学大の思惑
だが今回は、それが通じなかった。ライバルチームの凄まじい追い上げで、ここからレースは波乱の展開を見せる。
5区と6区、全日本でのいわゆるつなぎ区間で、強さを見せつけたのが國學院大だった。
出雲で駅伝デビューを飾った野中恒亨(2年)が2大会連続で区間賞を獲得。続く6区では復調過程にある山本歩夢(4年)が区間新記録の力走で、見えなかった青学大の背中をわずか4秒差の射程圏内にまで捉えてみせた。
振り返って、國學院大の前田監督が勝利のポイントに挙げたのがまさにこの2区間だった。