第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
季節外れの過酷な暑さに波乱続出! 箱根駅伝予選会で本戦出場への明暗を分けた「セルフコントロール術」とは
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/31 10:00
過酷なコンディションのなか力走する選手たち。中央の白いユニフォームは2位となった専修大学の具志堅一斗
しかし、それらの想定外の事態にも、選手たちが同じ轍を踏むことはなかった。
「何かトラブルがあった時に、うまくいかなくなるのが東京国際の弱さなのかなとずっと思っていました。新チームがスタートしてからは『タフなチームにならないと予選会は通過できないぞ』と選手たちに言ってきました」
東国大の中村勇太ヘッドコーチは、自チームの弱点を理解し、タフさを求めてきた。
もちろんそれだけでない。
「僕自身が大したランナーではなかったので、実際にこの気候だったらどれぐらいでいけるかって正直よく分からないんですよね……」
中村コーチはこう謙遜するが、暑さを考慮した戦術もはまった。
実は5年前の第96回大会の予選会も、20度を超える暑さの中でのレースになった。この時にトップ通過したのが東国大だった。そのレースを参考にしつつも設定ペースに幅を持たせ、最終的にはレース展開を選手たちに任せた。
「日が陰る、太陽が出る、それで体感温度もかなり変わります。そこは臨機応変に、攻める・我慢するの判断を選手自身がして、最後まで力を振り絞るようなレースの進め方をするようにと指示しました。(1km)3分10秒までだったらペースを落としていいから、がんばっていこうとも話をしました」
箱根で勝負するために
終始通過圏内でレースを進めると、最後まで粘り抜いて8位で本選出場を決めた。
「キャプテンは途中棄権しましたが、へばって大失速する選手はいませんでした」
選手たちは中村コーチの狙い通りの走りを見せた。アクシデントがありながらも、それを撥ね除ける強さを見せたことは、選手たちにも自信になったに違いない。
「箱根駅伝は1区間20km以上の距離を1人で走り切らなければいけない。それに、上り坂もあれば下り坂もある。暑くなることもあれば、風が強く吹くこともある。追う展開、追われる展開、単独走……いろんな条件の中で自分の力を最大限発揮する、自分をコントロールできる能力っていうのをしっかり持たないと、箱根で勝負はできません。それは口を酸っぱくして言ってきました」
そうなのだ。大学駅伝シーズンは11月の全日本大学駅伝、1月の箱根駅伝と続く。駅伝は単独で走る場面が多く、指揮官が指示を送れる機会も限られている。予選会以上に選手たちが自分で判断し、自分をコントロールすることが重要になるはずだ。