第101回箱根駅伝(2025)BACK NUMBER
出雲駅伝を制し、國學院大學が今季の主役候補に…青山学院大学、駒澤大学の「2強」の勢力図を塗り替えるか?
posted2024/10/30 10:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
Nanae Suzuki
レースに敗れた時、青山学院大学の原晋監督のコメントは極端に短くなる。
「改めて、勝つのは難しい。駅伝は難しいね。やっぱり勢いを感じます、(優勝した)國學院さんにはね。うちももっと貪欲に、勝ちに行く姿勢が必要でしょう」
大学駅伝の緒戦である出雲駅伝は、前評判の高かった青学大を3位に退け、國學院大學が5年振り2度目の優勝を果たした。
学生たちの手で、3度胴上げで宙に舞った前田康弘監督は、対照的な笑みを浮かべてこう言った。
「今回はうちに流れや選手のコンディションが向いたんだと思う。もちろん選手の努力もあるけど、3大学の力の差はほとんどないと思ってます」
青学大と駒澤大学の2強。ここ数年は、大学駅伝のタイトルをほぼこの2校で分け合ってきた。では今回、國學院大はどのような秘策を講じて、2強の壁に割って入ることができたのか。
堂々と勝ちに行くチーム作り
前田監督が強調したのは、今年に懸ける決意だった。
「5年前に勝ったときは、正直『勝ってしまった』と思うところもあったんです。でも今年は戦力的にみても勝負の年で、堂々と勝ちに行くチーム作りをしてきた。一戦必勝で、どの駅伝も獲りにいくからと。その心構えが平林とも共有できていたからこそ、ああいう強気の走りができたんじゃないですかね」
監督が振り返ったのは、優勝を決めたアンカー対決だった。
前半から3校が激しい鍔迫り合いを演じ、最終6区にたすきが渡っても差はわずか。初マラソン日本最高記録を持つ國學院大の平林清澄(4年)がトップで走り出すと、4秒差でハーフの日本人学生記録を持つ駒大の篠原倖太朗(4年)が追いかける。さらに前回の箱根駅伝3区での快走が記憶に新しい青学大の太田蒼生(4年)が24秒差で続いた。
史上稀に見るエース同士のぶつかり合いに決着をつけたのは、区間中盤で見せた平林の果敢なロングスパートだった。
「ラストスパート勝負にはしたくなかったので、中盤のアップダウンでギアを上げました。自分から仕掛けて勝負できたことは良かったです」と本人が語るように、勝負に勝つための最善策を探し、高いレベルで実践できたのが彼の非凡さである。
終わってみれば、平林は区間賞の走りで、2位駒大との差を40秒まで広げた。3位の青学大とはちょうど1分の差だった。