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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「配信があって幸せだ」英国人記者は“異例の7大世界戦+那須川天心”をどう見た?「中谷、堤は見事だったが私の目を引いたのは…」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/10/17 11:05
ボクシング転向後、初めてベルト巻いた那須川天心/階級をあげて本来のキレを取り戻した寺地拳四朗/井上拓真を倒して新王者に輝いた堤聖也
13、14日の興行では、前編で名前を挙げた中谷、堤、そして前述の那須川以外にも多くの選手が優れたパフォーマンスを見せてくれました。なかでも私の目を引いたのは寺地拳四朗の充実ぶりです。
寺地はWBC世界フライ級王座決定戦でクリストファー・ロサレスを下し、2階級制覇を果たしました。108パウンドのライトフライ級から112パウンドのフライ級に上げたことは、大きなメリットを生み出したのでしょう。たった4パウンドの違いでそこまで言うのはクレイジーに思うかもしれませんが、寺地は昇級によって“新しい命”を与えられたというのが私の意見です。
「フライ級4団体統一も不可能じゃない」
対戦相手のロサレスは元世界王者であり、現在もリングマガジンの階級ランキングでトップ10にランクされる実力者。寺地のフライ級初戦の相手としては適切でしたし、実際にいい試合になりました。
今回の寺地にはよりエネルギーが感じられ、前戦のカニサレス戦のように多くのパンチをもらうこともありませんでした。カニサレス戦後には正直、その健康状態が心配になったほどでしたが、ロサレス戦での寺地はほぼ完全に違うボクサーだったといっていいでしょう。試合中盤、ロサレスはサウスポーにスイッチし、寺地のリズムが狂わされかけた瞬間がありました。そこでもすぐに立て直し、総合力の高さを証明してみせたのです。
キャリアのこの時点での昇級は正解であり、WBC王者になった32歳の今後がまた楽しみになって来ました。11月下旬、サニー・エドワーズ対ガラル・ヤファイというWBC暫定タイトル戦が組まれていますが、どちらが上がって来ても寺地が上と見ます。WBA王者ユーリ阿久井政悟、WBO王者アンソニー・オラスクアガといった他の王者たちを含めても寺地が劣っているとは思えず、うまく統一戦が組めれば4団体統一に向かうことも不可能ではないでしょう。そうやって将来を楽しみにできる勝ち方をしてくれたことを、私も嬉しく思います。