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“サウジ戦、試合前に勝負あり”記者が確信「日本代表サポ10人ほどに…」森保監督とサブ組の“テレビに映らない”真相「その上で1つに、ね」
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2024/10/14 17:02
鬼門のアウェーでキッチリと2-0。試合を決めた2ゴール目に、スマホをむけるサウジファンの姿も
「ベンチになっても全員が、『試合に出たい』と思っていますからね。途中から試合に入って、(小川)航基君が点を決めたように、どれだけ良い準備をして、試合に挑めるのか(を考えて行動する)というのは、やはり自分たちの良い所だと思うので。ただ、その上で、チームが1つになって戦っていけたらいいなとも思っていますよ」
確かに、後半29分に設けられた飲水タイムが終わるタイミングで、スタッフと一緒に率先してボトルを受け取りに走り回る菅原の姿があった。
試合前に、これほどまでの差があった。
そして6万人強を収容できるはずのスタジアムのチケットは完売したと発表されていたのに、キックオフ後もゴール裏スタンドは埋まらないまま(サウジアラビアではコアサポーターはバックスタンドの1階席中央に陣取る)。最終的には5万6283人しか入らなかった。ホームで行なわれた最終予選での初戦でも、彼らから見たら格下のインドネシアと引き分けているのもうなずけるような熱量の欠如だった。率直に記せば、中立地のカタールで行なわれたアジア杯イラン戦のほうが、はるかにアウェーの雰囲気があった。
これでは、日本が負けるはずがなかった。
サウジの“意外な戦略2つ”にも落ち着いていた
サウジアラビアがとってきた戦術や戦略で、意外性があったのは大きくわけて2つある。
1つが、中央寄りのポジションでプレーすることの多かった19番のサーレム・アルドサリを左サイドのアウトサイドで起用してきたこと。
もう1つが、古典的な戦略。しっかりとスカウティングをする日本の特長を逆手にとり、攻撃的なポジションの選手たちの背番号を、9月の試合から以下のように入れ替えてきたのだ。
サーレム・アルドサリ:10番→19番
ムザブ・アルジュワイル:8番→7番
ナサール・アルドサリ:13番→6番
日本で言えば、三笘薫と守田英正と南野拓実の背番号を変更したようなものだ。この種の背番号による入れ替え戦略は、マジック・マジャールの異名をとったハンガリー代表が1953年にイングランド代表を倒す際に最初に用いられたとされる古典的なものである。
ただ、日本の選手たちは落ち着いていた。
ドイツ代表やスペイン代表の選手であれば顔も認知できるが、サウジアラビア代表にはあまりなじみがない。だからこそ、とれる戦略は2つ。事前に彼らの顔をしっかり記憶すること。そして良い意味でスカウティングに頼りすぎない。それによって相手の陽動作戦に上手く対応した。第3回で示すように、コーナーキックの場面をのぞいて――。
「自分が引き出して、(南野への)縦パスから、ボックスに入っていって(鎌田大地の得点をアシストした)一連の流れはすごくキレイで良かったなと思います」
肝心の試合は、こう振り返った殊勲の守田の活躍もあり、14分の鎌田のゴールで早々に先制。後半36分の小川の追加点もあり、2-0で日本が勝利をつかんだのだった。
そんなピッチ上での攻防で勝負を分けたポイントについて――あまり触れられていない選手にフォーカスしたい。
2シャドーの一角を務めた、南野拓実である。<つづく>