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大谷翔平59盗塁の成功率「.937」メジャー100年超で“実は史上2位”…成績を詳細分析すると面白い傾向だらけ。ただ古巣エンゼルス相手には 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/10/05 17:21

大谷翔平59盗塁の成功率「.937」メジャー100年超で“実は史上2位”…成績を詳細分析すると面白い傾向だらけ。ただ古巣エンゼルス相手には<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

レギュラーシーズン後半戦に盗塁を成功し続けた大谷翔平。成績から見ても「次を狙う」走者としての進化がクッキリと分かる

 MLBで「盗塁死」が公式記録になった1914年以降、50盗塁以上の記録は今年のデラクルーズ(レッズ)にチュラング(ブルワーズ)、大谷まで250例あるが、最も盗塁成功率が高かったのは1922年、殿堂入りの名外野手マックス・キャリーがパイレーツで記録した.962(51盗塁2死)。大谷の.937(59盗塁4死)は、実は史上2位なのである。

 大谷は単に史上初の50-50を達成しただけでなく、極めて高いクオリティも満たしたうえで大記録を達成したといえる。

「ルール改定のおかげ」に反論できるワケ

「だけど、大谷翔平の盗塁が増えたのは去年、MLBのルール改定があったからだろ。その部分は割り引かないと」

 そんな声が聞こえてきそうだ。

 MLBは「試合時間の短縮」を目的として2023年シーズンから「投手が牽制球を投げるか、もしくは投手板から足を外す行為は1打席あたり2回までに制限され、3回目以降は走者をアウトにできなかった場合ボークとなる」とルールを改めた。

 また接触プレーでのアクシデントを軽減するために、「本塁を除く各ベースのサイズを15インチ(約38.10センチ)四方から18インチ(約45.72センチ)四方に拡大する」というルール改定を行った。これによる盗塁数の変化はどうなっているのか。

 以下、ここ10年のMLB全体の盗塁成功率と1試合当たりの盗塁企図数(※マーク)の推移。

 2015年/率.702(2505盗塁1064死)※0.71
 2016年/率.717(2537盗塁1001死)※0.73
 2017年/率.730(2527盗塁934死)※0.71
 2018年/率.721(2474盗塁958死)※0.71
 2019年/率.733(2280盗塁832死)※0.64
 2020年/率.752(885盗塁292死)※0.66
 2021年/率.757(2213盗塁711死)※0.60
 2022年/率.754(2486盗塁811死)※0.68
 2023年/率.802(3503盗塁866死)※0.90
 2024年/率.790(3613盗塁961死)※0.94

 2023年のルール改定以降、成功率は7割台半ばから8割台になった。また企図数も増加した。確かに「盗塁がしやすい環境」になった。

 しかし今年の数字を見ると、少々印象が変わるのではないか。

 企図数はさらに増えたものの、成功率は再び7割台に。改定後、MLBでは我も我もと走り出したが、投手や捕手は自衛策として盗塁阻止のスキルを上げつつある。

打順別・アウトカウント・塁別…詳細に見てみる

 そんな中で大谷は59盗塁して成功率9割以上を記録している。ルール改定による恩恵はあるにしても、大谷が高い次元で塁間を走り回っているのは間違いない。

 今季の大谷の盗塁内容を詳細に見てみよう。

【次ページ】 計20チームから盗塁成功。古巣エ軍相手には…

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