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「オオタニよりリンドーア推し」NYメディアを黙らせた大谷翔平“MVP最重要成績”はDH一刀流でもダントツ…得るだろう「奇想天外な称号」とは
posted2024/10/05 17:20
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
50-50を大きく上回る「54-59」の成績を残した大谷翔平、MVP争いでも本命になったのは間違いないだろう。
このコラムでも何度か紹介したが、NPBとMLBではMVPの考え方がかなり違っている。まずその前提について知っておこう。
よく話題になるWAR…実は公式記録じゃない
NPBでは「リーグ優勝に最も貢献した選手」を選ぶのが原則だ。三冠王や大記録など球史に残る活躍をした選手が、例外的に下位チームから選ばれることはあるにしても「チームの勝利に結びつく活躍をした選手」が選ばれる。
しかしMLBでは「純粋にそのリーグで一番活躍した選手」が選ばれることが多い。2023年、ア・リーグで西地区4位、エンゼルスの大谷翔平が選ばれたのがその好例である。なおNPBもMLBも「ポストシーズンの成績」は考慮しない。
そしてNPBではMVPには投手、野手ともに選ばれる可能性がある。もちろんMLBも投手がMVP選考の対象ではあるが、2014年にドジャースのクレイトン・カーショウ(21勝3敗 防1.77)が選ばれたのを最後に、すべて野手が選ばれており、投手はサイ・ヤング賞受賞に回った印象がある。
またNPBでは「打率、打点、本塁打」「勝利、セーブ、防御率」など、公式記録が選考の基準となる。一方でMLBでは21世紀に入って定着したセイバーメトリクスで、投打の総合指標であるWAR(Wins Above Replacement)が最重要視される。NPBもMLBも記者投票でMVPを選んでいるが、見ている資料が違うと言えよう。
ただしWARは、MLBの公式記録ではなく、データ専門サイトの『Baseball Reference』と『FanGraphs』が独自に算出している。守備に関するデータなど、その数字は微妙に異なっている。
2023年、大谷やベッツらのWARはどうだった?
以下、昨年のア・ナ両リーグのMVP得票ポイントとWARの数値。Baseball ReferenceのWARはrWAR、FanGraphsのWARはfWARと略している。
【アメリカン・リーグ】
1.大谷翔平(エンゼルス)二刀流
420ポイント:rWAR9.9 / fWAR8.9
打:44本95点20盗 率.304
投:10勝5敗 率3.14
2.コーリー・シーガ-(レンジャース)遊撃手
264ポイント:rWAR6.9 / fWAR6.3
打:33本96点2盗 率.327
3.マーカス・セミエン(レンジャース)二塁手
216ポイント:rWAR7.4 / fWAR6.3
打:29本100点14盗 率.276
【ナショナル・リーグ】
1.ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)外野手
420ポイント:rWAR8.2 / fWAR9.1
打:41本106点73盗 率.337
2.ムーキー・ベッツ(ドジャース)外野・内野
270ポイント:rWAR8.3 / fWAR7.7
打:39本107点14盗 率.307
3.フレディ・フリーマン(ドジャース)一塁手
227ポイント:rWAR6.5 / fWAR7.8
打:29本102点23盗 率.331