メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「あれだけの大物が進塁打を…」大谷翔平の「54-59」を支えたムーキー・ベッツの献身…プレーオフ突破へ「心配事が多い」ドジャースのキーマンは?
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph byGetty Images
posted2024/10/03 11:02
高いレベルのプレーでドジャース打撃陣を牽引した大谷とベッツ
僕もメジャー時代に感じたことですが、外国人投手の多くはクイックモーションを駆使してこないため、走者が次の塁を狙いやすいという点はあります。ピッチクロックや牽制の回数制限など23年シーズンからルールが変わったという背景も大きいでしょう。でもそれで走れるなら、他の選手も全員が盗塁を量産しているはず。そうではないということは、やはり大谷の判断力、盗塁スキルがずば抜けているということです。
データ分析力に加えて…
一番は成功する確率が高いところでスタートを切っているという点。これはデータであったり、その時のピッチャーの球種、配球、そして雰囲気なんかも含めて確実に決められるという判断をしているということです。大谷は盗塁成功率も90%を超えていますから、リスクの高い盗塁はしていない。グリーンライトが与えられている選手なので判断は自分で下していると思いますが、データの分析力に加えてその場の状況に応じて、相手投手の何かを感じて選択できる力も高いのだと思います。
一塁から二塁というのは相手投手のモーションの大きさによって成功率が変わるのですが、二塁から三塁に関しては完全に投手側の“スキ”なんです。モーションの癖であったり、走者に気が向いていないという気の緩み……大谷は三盗も確実に決めていますから、常に次の塁を狙うという姿勢を保った上で相手投手の隙を確実に突いている。
見逃せないベッツの献身
彼が打てばチームが勝つ確率は高くなるし、盗塁に成功すればその確率はさらに上がる。塁に出せば厄介だということになれば、投手の集中力が削がれて次の打者への投球にも影響が出てくる。盗塁やホームラン数は個人成績ですが、この好循環を作ることはチームプレーなんですね。彼自身も常に「チームが勝つために」という言葉を口にしていますが、まさにそれを体現しているのだと思います。
一方で、大谷の後ろを打つムーキー・ベッツやフレディ・フリーマンの意識の高さというのも見逃してはいけないと思います。大谷が出塁して走りそうだなという時にはベッツがある程度ボールをよく見るとか、スタートを切るタイミングを意識しながら打席に立っているのが分かる。ベッツが何でもかんでも積極的に行っていたら盗塁のチャンスも消してしまうので、その存在は非常に大きかったと思います。
高いレベルの「フォアザチーム」
シーズン中にはどうしても1点欲しいという局面のノーアウト二塁に大谷、という場面でベッツがセカンドゴロを打っている場面も印象的でした。進塁打という言葉はアメリカではあまり聞かないけれど、ベッツもその辺りを意識してプレーしているのは見ていると伝わってきます。
こういう選手が後ろにいるかいないかというのは数字にも大きく影響します。もちろん数字を残した大谷が凄いというのは大前提として、ベッツやフリーマンが後ろにいたからこそ、ということも見逃してはいけないでしょう。あれだけの大物選手たちがみんな、チームが勝つことを第一にプレーしている。非常に高いレベルで「フォアザチーム」ができていることが3年連続地区優勝につながっているのです。