甲子園の風BACK NUMBER
「なぜプロ志望届を出さない?」大社エース・馬庭優太が初めて明かす“進路の決断”…部員数ギリギリの中学野球部から“早稲田実を倒すまで”
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph byKota Inoue
posted2024/09/07 17:00
今夏の甲子園を驚かせた大社高・馬庭優太がインタビューに応じた
今夏の県大会から激変…ウラ側
だが、今年の夏、島根大会で一変する。準々決勝の出雲商戦は125球、準決勝の開星戦は106球、決勝の石見智翠館戦は113球と、理想的な球数にまとめて大会の終盤3試合を連続で完投し、大社を32年ぶりの甲子園に導いたのだ。何が馬庭の投球を変えたのか。本人が解説する。
「体力を底上げしたり、打たせてとる練習も大切なんですけど、一番は経験と集中力。集中できていれば、試合中に疲れを感じない。疲れを感じないから投げ切れる。最後まで集中力を切らさないためにも、ピッチングにメリハリをつけないといけない。この夏から、バッターを見ながら投げられるようになりました」
とはいえ、酷暑によるダメージ、夏独特のプレッシャーもあったのだろう。島根大会決勝で最後の1球を投げた直後は、マウンドで膝から崩れ落ちた。
ワンテンポ遅れて、仲間たちの歓喜の輪に加わった馬庭に、閉会式後「相当疲労があったのではないか」と投げかけると、優勝の解放感もあったのか、こう本音をこぼした。
「7回ぐらいにピークが来て、なんとかギアを上げて踏ん張りました。でも、9回に追いつかれて、延長になってたら正直無理だったと思います」
あの神村学園戦「疲れよりも…」
その後、夏の甲子園で完投した試合の球数は、初戦の報徳学園戦は137球、2回戦の創成館戦は10回を投げて115球、早稲田実戦は11回で149球。球数は増えるも、心身の余裕が投球にメリハリを生んだ。そのテンポが野手の打撃と守備にリズムを生み、投打が噛み合った。
甲子園から帰郷して少し時間が経った今、この夏初めてリリーフで起用された神村学園との準々決勝時の疲労度について尋ねた。甲子園での試合後は一切言い訳をしなかったものの、今だから語れる話があるのではないかと思ってのことだった。