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セーヌ川問題は「終わっていない」…水質汚染で「中止」を連発、未解決のままパラリンピックに突入「結局リスクは残った」選手村にも課題
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byGetty Images
posted2024/08/21 11:02
8月9日に行われた男子マラソンスイミング。セーヌ川を泳ぐスペインのカルロス・ガラチ(結果は途中棄権)
「予定していた2回の事前練習がなくなってしまって、当日初めてセーヌ川に入る形になりました。水質は気になりませんでしたが、壁沿いや柱の近くでないと流れが本当に急で、流れるプールを泳いでいるみたいでした」
セーヌ川の状態がわからないまま、水の中へ飛び込んだ選手たち。男子のニナー賢治はこう振り返る。
「流れが非常に強く、これまでの競技人生で体験したことがない流れの速さでした」
「他の選手も置かれた状況は一緒」と出場選手は一様に言い訳をしなかった。プロ野球のようにほぼ連日試合のある場合ならまだしも、4年に一度のレースだ。延期や中止は避けられなかったとしても悔いのないレースをするために、せめて練習の機会は設けられるべきだったのではないかと思う。テレビなどではあまり映し出されることはないが、事前練習は他の競技では当たり前に行われている。いわば試合に臨む選手として当然の権利のようなものだ。
ちなみに8月3日と4日のトライアスロン混合リレーの練習と6日のオープンウォータースイミングの練習が、それぞれ水質汚染によって中止となっている。7月末にたまたま水質汚染が起きたわけではないことも付記しておく。
「セーヌ川での競技をどう評価?」パラ委員会会長を直撃
そしてこの問題は未解決で終わった問題ではない。8月28日開幕のパラリンピックでも9月1日と2日にトライアスロン競技が予定されているのだ。日本からは男女あわせて4選手(秦由加子、木村潤平、宇田秀生、米岡聡)が出場予定となっている。
セーヌ川を使った最後の種目・男子オープンウォータースイミングが行われた9日。パリ市長とともに記者会見に出席し、メディアセンターを後にしようとする国際パラリンピック委員会(IPC)の会長アンドリュー・パーソンズに尋ねた。