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セーヌ川問題は「終わっていない」…水質汚染で「中止」を連発、未解決のままパラリンピックに突入「結局リスクは残った」選手村にも課題

posted2024/08/21 11:02

 
セーヌ川問題は「終わっていない」…水質汚染で「中止」を連発、未解決のままパラリンピックに突入「結局リスクは残った」選手村にも課題<Number Web> photograph by Getty Images

8月9日に行われた男子マラソンスイミング。セーヌ川を泳ぐスペインのカルロス・ガラチ(結果は途中棄権)

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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「最初から最後までセンセーショナルなオリンピックでした。また、あえて言うなら、最初から最後まで『セーヌセーショナル』なオリンピックでした」

 8月11日のパリ五輪閉会式。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長がスピーチで発した造語に会場のスタッド・ド・フランスは静まり返った。

失笑を買ったバッハ会長「渾身のオヤジギャグ」

 バッハ会長はウケを待つようにして黙っている。だが、なかなか笑いが起きない。

 自分が理解できないだけかとあたりを見渡すと、周りの観客もキョロキョロしている。その静寂は、陸上競技の号砲を待つスタート前の静けさを思い出す。

 ビジョンに目を移すと「SEINE-sational」と書かれていた。

 英語話者が多い記者席では、大きな反応が起きず、苦笑いを浮かべる人が多数。反応があっても「セーヌ、セーショナル。オー……」と、なんだか困ってとりあえずオウムがえしをするというリアクションをとっている。地元フランス人も多い観客席では一部拍手が起きたが、どちらかといえば失笑が大半という印象だった。

 来年退任の意向を示したバッハ会長が「最後の五輪」で渾身のオヤジギャグを披露する中、スタジアム北西の出口には途中退場を希望する各国選手たちが押し寄せていた。

水質汚染のセーヌ川で“ぶっつけ本番”を強いられ…

 たしかに、あえて言うなら、セーヌ川は最初から「センセーショナル」な会場だった。

 開催前からセーヌ川の汚さは問題となっていた。通常時でも「大腸菌の数値が大阪・道頓堀の約6倍」とされた水質汚染。加えて、パリ市の下水道システムが、汚水と雨水が同じ管に入る「合流式」であることも水質が安定しない要因に。その管に大量の雨水が入り込み、一定の量を超えてしまうと、汚水がセーヌ川に流れ込んでしまうのだ。

 オリンピックでは開会式の夜から雨が続き、水質が悪化。予定されていたトライアスロンのスイムの練習は中止となり、男子は7月30日の競技自体が延期に。結局、男女ともに31日の実施となった。

 女子の高橋侑子はレース後、こう語っていた。

【次ページ】 「セーヌ川での競技をどう評価?」パラ委員会会長を直撃

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