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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「公道を馬が歩いている!」パリ街中で遭遇した“馬が身近すぎる”驚きのフランス馬事情「馬糞を見るのも日常」「馬術の競技人口は日本の約100倍」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byYu Saito
posted2024/08/20 11:40
日常的にパリの街中を闊歩する警察騎馬隊。日本ではなかなか目にすることのない光景だ
日本でいえば、「スポーツデポ・アルペン」や「スーパースポーツゼビオ」が馬術用具を扱っているようなもの。筆者が知る限り、総合スポーツ用品店で馬術用具が売られているのは見たことがない。フランスの競技人口は67万人(フランス馬術連盟に登録している会員数/2023年)を超えている。一方、日本は6830(日本馬術連盟に登録している会員数/日本馬術連盟『令和5年度事業報告』より)という数字にとどまっている。そういった競技者の存在がスポーツ用品店の取り扱いにも影響していると言えるだろう。なお、商品の取り扱いは男性向けより女性向けのアパレルエリアが大きく、五輪種目でも男女が別け隔てなく出場する競技の特性が表れている印象を受けた。
ちなみにこれは関係ないかもしれないが、パリの地下鉄駅の改札出口の一部は、競馬のスタートゲートと同じ構造を採用。人が立つと自動で左右の扉が中央から外側へと開く仕組みになっている。ゲートが開く音も競馬のスタート時とほぼ同じ。騎手とならなくても、地下鉄に乗っているだけでジョッキーの気分を味わえるのだ。
子ども向けの本にも…「競馬よりもむしろ馬術がメジャー」
話が脱線したが、最後に日本と異なる馬事文化的な側面をもうひとつ紹介したい。フランスに20店舗近くあるチェーン書店「Cultura」を訪れたときのこと。小さい子ども向けのライトノベルコーナーに表紙が見える形で置かれていた18冊の書籍のうち、5冊で乗馬に関するイラストが記されていた。なかでも馬術を想起させるイラストが多く、競馬よりもむしろ馬術のほうがメジャーな印象だ。
これらの事柄から結論づけるのは早計かもしれないが、競技会場や街中で馬を見ても特段騒ぎが起きない要因のひとつには、馬との距離の近さがあるのではないかと筆者は感じた。
日本でも乗馬に関する作品はあるが、子ども向けの作品が一般書店で大きく売り出されている印象はない。競馬に関して言えば、ギャンブルというイメージは根強く、筆者自身、競馬をスポーツとして認識するようになったのは20歳を超えてから。そして馬を直接見たのも20歳を過ぎてからだ。最近は『ウマ娘 プリティーダービー』などの作品によって接触機会は変わりつつあるが、身の回りの競馬ファンに話を聞くと、成人年齢を迎えてから競馬を深く知った人が多い印象だ。