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え、リネールvs斉藤立の応援が「仕込み」!? パリ五輪、どんな競技でも会場が超盛り上がっていた秘密は「チケット支給の公設応援団長」だった!
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2024/08/12 11:03
柔道混合団体戦決勝、「電子ガチャ」からのリネールの勝利でシャン・ド・マルス・アリーナは熱狂に包まれた、のだが……
今年の2月までに、各種目の連盟を通じて連盟登録選手、元選手、私設応援団、さらに公募によってリーダーが選抜された。
各連盟によって、人数や選考方法は異なる。
希望者が自分の「応援力」をアピール
ラグビー連盟では、公募においては、自分がいかに雰囲気を盛り上げ選手を熱くサポートできるかをアピールする最高の写真またはビデオを送ることとされた。近代五種ではクイズというか試験問題のような質問があって成績順に決まる。
リーダーたちのために、約4500枚のチケットが確保された。その費用は、全額CNOSF(フランス体育協会、直訳:フランス全国オリンピックスポーツ委員会)とスポーツ省が負担した。なお、選手の写真、リーダーのメガホン、横断幕、旗、帽子、Tシャツ、そして観客の小旗、張扇、国旗色のメイクアップまですべての資材はEDF(フランス電力)がスポンサーになっている。
オリンピック前のフランスで開催される各種競技の国際大会や大きなスポーツイベントにサポーター席がつくられ、リーダーたちが招かれて、いわば実証実験が行われた。
また、6月15日からワークショップもおこなわれた。各種目ごとにルールや応援の仕方を解説したファイルがつくられた。
「フェンシングについてはあまり知りませんでした」
リーダーは自分を選んだ連盟の種目だけに行くわけではない。
「フェンシングについてはあまり知りませんでした」と、あるリーダーは語る。彼はサッカーの応援団員だが、ほかのリーダーたちと競技会を観戦して、この静かな競技でスタンドを盛り上げるにはどうしたらいいかを考えた。そして、各攻撃の間の多くのデッドタイムに非常に短い曲でサッカー並みの応援をすると決めた。メダリストとなったフランス選手たちにはとても好評だった。
しかし、いつもうまく行くとは限らない。体操の種目別のときは、「シーッ」と会場に静寂を作ったのだが、平均台で失敗した後、アメリカのシモーネ・バイルズ選手は「平均台はいつも最もストレスが溜まりますが、音楽やバックグラウンドノイズがあります。正直なところ、騒がしい環境の方がうまくいくんです。静まり返ってとても気詰まりでした」と嘆いた。