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男子100m「史上最激戦」決着のウラで…準決勝敗退でもサニブラウンが見せた“成長の跡”「スタートの音が聞こえなかった」から5年での進化
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/09 11:00
パリ五輪100m準決勝で9秒96の自己ベストをマークするも敗退したサニブラウン。それでもそこには過去からの「確かな成長」が見えた
サニブラウンが100mで五輪に出場するのは、意外にも今回が初めてだった。とはいえ、世界選手権ではファイナリストの常連になりつつある。22年のオレゴン大会で7位、昨年のブダペスト大会で6位と、2大会連続で入賞している。
オレゴン世界選手権は、予選でいきなり9秒台(9秒98)をマークし、組1着で準決勝に駒を進めた。準決勝でも10秒05と踏ん張り、組3着だったもののタイムで拾われて決勝進出を決めた。
しかし、快進撃はここまでだった。
「ちょっと準決勝で(力を)使い切った感じがあった。体の動きはよかったんですけど、やっぱり最後のつめが甘かったですね。準決勝のときよりも緊張はしていなくて、わりと冷静だったのですが……」
決勝は10秒06で7位。
世界の上位勢がラウンドを重ねるごとに記録を伸ばしていくのに対して、サニブラウンは予選、準決勝、決勝と進むにつれ、タイムを落とした。「満身創痍の状態で、メンタルも、体もうまくリセットできない状態で決勝に挑んだ」と後に振り返ったように、この時のサニブラウンには決勝で戦う力が残っていなかった。
ブダペスト世陸は決勝で「もう一段階ギアを上げないと」
翌年のブダペスト世界選手権では、また一歩成長した姿を見せた。
予選は10秒07で1着。準決勝は9秒97まで記録を伸ばし、2着に入った。
「去年よりも(準決勝から決勝までに)時間があり、コンディションも悪くなかった。体自体も動いていたし、痛いところもなかった。本当に練習通りの走りをやるだけだった」
今度は、着順で決勝進出を決めた。それだけでなく、決勝で戦う準備も万全だった。
ところが、その決勝はプラン通りにレースを組み立てることができなかった。60mからスピードに乗り切れず、10秒04で6位に終わった。
「まじで悔しいですね。(6位は)全く満足していない。今年はいけると思っていた。他の選手を見ていると、(決勝は)もう一段階ギアを上げてくる。それができないと勝てないなって、今年も身に染みて感じました」
調子が良く、戦える手応えもあっただけに、6位入賞にも悔しさが大きかった。