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男子100m「史上最激戦」決着のウラで…準決勝敗退でもサニブラウンが見せた“成長の跡”「スタートの音が聞こえなかった」から5年での進化 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2024/08/09 11:00

男子100m「史上最激戦」決着のウラで…準決勝敗退でもサニブラウンが見せた“成長の跡”「スタートの音が聞こえなかった」から5年での進化<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

パリ五輪100m準決勝で9秒96の自己ベストをマークするも敗退したサニブラウン。それでもそこには過去からの「確かな成長」が見えた

 サニブラウンが国際舞台でブレイクを果たしたのは2015年のこと。

 世界ユース選手権で100mと200mの二冠を成し遂げると、同年の北京世界選手権では200mで16歳にして準決勝に駒を進めた。これは史上最年少での準決勝進出だった。さらに、2017年のロンドン世界選手権では200mで7位入賞と躍進。この種目で18歳5カ月で決勝に進出するのも、史上最年少だった。

 しかし100mでは準決勝でスタート直後につまずき、バランスを崩す痛恨のミスを犯している。決勝進出も逃した。

 9秒台スプリンターとなった2019年は、世界選手権(ドーハ大会)に出場するのが3大会連続となり、風格も漂うようになってきた。100mの予選を走り終えた直後に「緊張を感じなくなってきた」とコメントしている。

 しかし、準決勝で思わぬ不運に見舞われる。観客席に近い外側のレーンだったサニブラウンは「スタート(ピストル)の音が全然聞こえなかった」と言い、スタートでいきなり遅れをとってしまった。

 猛烈な追い上げを見せ5着まで盛り返したものの、出遅れが響いた。その後、4×100mリレーでは4走としてアジア記録樹立に貢献しており、状態はすこぶる良かった。

縁が無かった五輪の舞台…4年後のロスに期待

 また、世界選手権で実績を積み重ねてきた一方で、五輪にはなかなか縁がなかった。

 2016年のリオデジャネイロ五輪は、左太もものケガで選考レースの日本選手権を欠場し、日本代表を逃した。2021年の東京五輪のときは、腰のヘルニアを抱えており、200mで出場を果たしたものの予選最下位に終わっている。力を入れてきた100mは出場さえも叶わなかった。

 このように、酸いも甘いも噛み分け、様々な経験を重ねる度に、サニブラウンは成長をしてきた。

 まだ25歳とはいえ、そろそろスプリンターとしては円熟期を迎える。来年の東京世界選手権、4年後のロサンゼルス五輪に向けて、今回のパリで味わった悔しさもしっかりと成長の糧にするだろう。

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