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柔道大国フランスは「超アウェー」だった? 帰国会見で聞いてみたら…阿部一二三、永瀬貴規らが現地の柔道人気に感じた「意外なホンネ」
posted2024/08/08 17:00
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
「もう、ひと言ですね。最高の景色でしたし、今までにない景色を見せてもらったなという気持ちでいっぱいです」
柔道男子66kg級で2連覇を果たした阿部一二三は、帰国後の会見で「フランスでの柔道人気」について聞かれこう口にした。
「柔道の母国」の誇りを胸に乗り込んだ「柔道大国」での夢舞台。“敵地”で味わった熱気は、対戦相手としてのしかかる重圧以上に、道を極める者としての誇りと喜びを感じさせてくれるものだった。
競技が行われたのは「シャン・ド・マルス・アリーナ」。エッフェル塔の下、シャン・ド・マルス公園の東端に位置する仮設会場に、連日8000人を超える観客が集まった。東京五輪の会場だった日本武道館のキャパシティーと比べれば3分の2以下だが、コロナ禍だった3年前の祭典は無観客だったことを考えると、選手のほとんどが初めて体験する熱狂的な空間だった。
フランスの大声援の「圧」
選手たちが特に驚いたのは、フランスのファンによる日本では考えられないような応援風景だったという。女子日本代表の増地克之監督が明かす。
「特にフランス代表の選手と戦う時には、試合前は大声援、そして大合唱なんです。日本の選手たちにとって、あれはプレッシャーだったと思います。でもこの凄い雰囲気の中で、逆にやってやろう、という気持ちにもなったはずです」
まるでサッカーの試合のような熱狂的なコールや耳をつんざく大歓声。何より自国選手の試合では観客がフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を大合唱し、会場に反響するその歌声が凄まじい“圧”となって降り注いだ。「血塗られた旗」や「戦場」というフレーズが出てくる革命歌を起源とするフランス国歌は、まさに“戦歌”としてフランス代表選手の背中を押していた。
圧倒的な“アウェー”の空気は日本の選手たちの焦りを誘い、また地元贔屓とも取れる不可解な判定にも悩まされた。増地監督は戦い終えたからこそ口にできる率直な思いを口にした。