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団体でも勝てずメダル数は減少…日本柔道は弱くなったのか? 「誤審」「ルーレット」を越えて、パリで見えた“お家芸”の課題とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2024/08/05 18:02
柔道混合団体戦決勝、フランス戦。代表戦にもつれこむ大熱戦の末に敗れた日本
個人的にはメダルの有無やメダルの色などで個々の選手が否定されるべきではないし、バッシングは論外だと思う。
ただ、日本柔道が目指すのは金メダルにほかならない。それを踏まえれば、金メダルおよびメダル全体が減った理由の1つに、変化に対応しきれなかった面があるのは否めない。
各国のレベルアップ、徹底した対策
今大会では多くの国にメダリストが誕生した。日本以上の柔道の競技人口と人気を有し、実力でも世界有数を誇るフランスでは、今回の代表チームに「ドリームチーム」「最強チーム」と期待が集まった。だが、個人種目の金メダルはリネールの1つにとどまった。開催国として万全を期したはずのフランスでも苦しんだことは、柔道の広がりと、強豪でも容易に勝てない、各国の強化のレベルを示している。
大会へ向けての対策を各国の選手が相当練っていたこともうかがえる。例えば女子52kg級で阿部詩を破り、金メダルを獲得したディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)の阿部との戦いぶりには対策のほどがみられたし、加えて、地力のたしかさもあった。
技をかけ、一本をとる柔道を目指して変わったルールのもと、それに対応した戦い方をする選手も増えた。積極的に攻めているように見せて、指導3つを狙うかのような駆け引きに長けた選手もいた。それらのさまざまな変化の中でどう戦うのかについて、日本は一歩遅れた面があるのは否めない。
世界ランクを軽視した影響
戦略でも、例えばランキングを重くみなかったことが影響した面がある。男子100kg級ではノーシードで出場したウルフアロンが準々決勝で世界2位の選手に敗れ、鈴木桂治監督は「シードは必要だなとあらためて感じました」と語っている。シードされるのは各階級ごとに8名、世界ランキングで決まるが、ウルフに限らず男女ともにシードされない選手がいて、あるいはシードされていても早めに世界ランキング上位と当たったケースもあった。
2012年ロンドン五輪までは、世界ランキング上位を目指し積極的に国際大会に選手を派遣していた。ただ怪我を抱えていても出場させて、コンディションに悪影響を及ぼすこともあり、弊害が指摘された。今回はある意味、逆に振れすぎたきらいはある。
大会で見えた課題とともに、国内の基盤にも課題は多い。