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団体でも勝てずメダル数は減少…日本柔道は弱くなったのか? 「誤審」「ルーレット」を越えて、パリで見えた“お家芸”の課題とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2024/08/05 18:02
柔道混合団体戦決勝、フランス戦。代表戦にもつれこむ大熱戦の末に敗れた日本
ひとつは競技人口の大幅な減少だ。
20年で4割減った柔道人口
2022年、全日本柔道連盟は個人登録会員数の変化を公表したが、その数字は衝撃をもたらした。2004年から2021年までの間に、男女あわせた人数が20万2025人から12万2184人と、約4割減少していたからだ。特に大学生以下の減少が数字からうかがえた。2023年は12万4559人とやや回復しているものの、以前との違いは顕著だ。選手層という点で、今大会はもちろん、今後にとっても大きな課題となる要素だろう。
もうひとつは、強化にあてる費用が減っているのではないかと思われる点だ。国際大会に派遣する人数が減っていることがそれをうかがわせる。出場できる枠はあり、試してみたい若手もいるのに、一大会への派遣人数がごく少数に限られてしまっているケースがしばしばみられた。また全日本柔道連盟は昨年赤字となり、今年度も赤字の予算を組んでいる。それらの事象からは、強化費の減少が推測される。
国際大会への派遣が減れば、海外の柔道の傾向を肌身に感じる機会も減る。むろん映像などをもとに、分析も徹底して行われているが、どうしても対策に限界はあるだろう。例えば男子100kg超級の3位決定戦で斉藤立がアリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)に敗れた戦いぶりをみると、ユスポフの独特のスタイルに対応できていなかった感はある。
お家芸の現在地が見えた大会
さまざまな要因があって、パリ五輪の成績につながっている。世界選手権などの成績からしても、パリで急速に成績が低下したわけでもない。
柔道が世界的に広がる中、一定の成果はおさめた。金メダルを獲得した3人、角田と阿部一二三、永瀬貴規は日本の柔道家らしい、見事な柔道をみせ、発祥国として持つ誇りを示した。どのような状況でも全階級金メダルと目標を高く掲げるからこそ、日本の世界での地位も保たれている。
一方で、今後も含め、課題は少なくないことも浮き彫りになった、そんな大会がパリ五輪だった。