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パリ五輪「中国の圧倒的存在感」は競技以外でも…対して日本は?「じつは“あのチェーン店”が大人気。だが…」パリで記者が見た“もどかしい現実”
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byGetty Images
posted2024/08/05 17:01
卓球女子シングルスのメダルセレモニー。中国の陳夢(中央/金メダル)、孫穎莎(左/銀メダル)とセルフィーを撮影する早田ひな
「中国は世界ランク20位以上がぞろぞろ揃っていて、各大会には全戦型の練習パートナーやトレーナー総勢60人くらいの集団で臨んでいる。その一団が会場では『加油、加油』の大合唱をはじめる。どの競技会場においても、自然と中国の応援ムードができあがっていくんです」
もちろん応援の大きさは中国ペアが世界ランク1位だから、ということもある。実際、「孫穎莎」のボードを掲げるファンも多くいた。しかし、日本のペアも世界2位だ。ここまで応援に差がつくのは、選手の注目度という要因だけではないだろう。
広告、言語案内、報道でも…パリで感じる中国パワー
競技会場の外でもその差は現れる。パリのバス停には、男子シングルスで張本智和を破った樊振東と孫の看板広告が登場。広告には大きく中国語が記され、フランス語は近づかないと読めないほど小さい。なお、広告は牛乳のCMなのだが、パリのスーパーではお目にかかったことがない。一体、何のために広告を出しているのか。ちなみに中国三大牛乳メーカーのもうひとつ「蒙牛」も五輪公式スポンサーに名を連ねている。単なるビジネス的な側面だけでない大胆な広告戦略に、かの国の経済力を思い知る。
そもそもフランスに着いて驚いたのが、言語案内だ。空港のターミナル間を走る電車に乗ると、アナウンスはフランス語に次いで英語、中国語の順で行われる。そして空港内の案内表示もフランス語の次は英語、中国語のみだ。地下鉄構内の通路にも2025年開催の中国の神韻芸術団の公演告知ポスターが貼られているなど、中国語を目にする機会は多い。地下鉄に設置されているWi-Fiにつなごうとするとフランス語、英語、中国語、そしてスペイン語が選択できる。日本語はない。
競技会場にはミックスゾーンと呼ばれる選手たちが試合後に取材対応を行うエリアがある。まずTVのエリア、そして優先メディアのエリア、その後に筆者などが属する一般ペンメディアを通る形になっている。その優先メディアは競泳会場だと、AFP、AP、ロイター、新華社通信、そして五輪公式メディアの5つ。この5つは試合を観戦する記者席も他のメディアと異なり指定席がある“特別待遇”だ。世界を代表するメディアとして新華社通信が認識され、五輪公式と並ぶ立ち位置を確保しているのだ。