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誤審、号泣、辞退…選手に投げつけられる“誹謗中傷”は東京五輪より悪化している? 「正義感」を増幅するメディアの悪弊「コタツ記事」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoya Sanuki/JMPA

posted2024/08/03 11:05

誤審、号泣、辞退…選手に投げつけられる“誹謗中傷”は東京五輪より悪化している? 「正義感」を増幅するメディアの悪弊「コタツ記事」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki/JMPA

阿部詩が敗戦後に見せた悲痛な号泣にも中傷コメントが投げつけられたという

 誹謗中傷の問題は3年前の東京五輪でも問題となった。

東京五輪でも中傷はあったが…

 例えば、卓球の水谷隼が誹謗中傷の被害にあっているとSNSで伝え、サーフィンの五十嵐カノアがSNS上で、寄せられた誹謗中傷に対して反論したことも報じられた。体操の村上茉愛は試合後の取材で報道陣に問われ、誹謗中傷があったことを明かしている。彼らに限らず、少なくないアスリートが、誹謗中傷にあたる被害を受けた。

 東京五輪を機にこの問題が注目され、中傷を収めるための動きもあったが、結局いまだやむことはない。しかも今大会では、輪をかけて大きくなっているように見受けられる。

 なぜ、誹謗中傷に問題があることが広まり、認知されているにもかかわらず、止まることはないのか。

なぜ人々は誹謗中傷するのか

 誹謗中傷を起こす要因としてしばしばあげられるのが「正義感」だ。

 誹謗中傷にあたる言葉は、実は単なる不満であったり八つ当たりであったり、自分のネガティブな気分をぶつけやすいから発せられただけに過ぎなかったりする。でもそれが正しいと思い込んでいるから、書き込む側がやめることはない。自分の書き込みは誹謗中傷にあたらない、と思っていたりもする。

 誹謗中傷はどのようなことからでも起きる。今大会でなら、負けたあとのふるまいだったり、判定を巡る不満から相手選手や審判に向けてであったり、あるいは成績が芳しくなかったことへの怒りであったりする。それをぶつけるのが「正しいこと」だと思い込み、誹謗中傷を行う。

 誹謗中傷自体は、SNSが現れる以前、もっと前からあった。

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