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[世界の怪物たちに挑む]斉藤立「畳で見せる父への想い」
posted2024/08/02 09:01
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Takuya Sugiyama
柔道大国・日本といえども金メダルが遠い最重量の100kg超級。その頂に挑戦するのは、95kg超級で五輪連覇を果たした斉藤仁氏を父に持つ若武者だ。強敵リネールとどう戦うのか、意気込みを聞いた。
パリで初めての五輪に挑む男子100kg超級の斉藤立は、2022年に全日本選手権を初制覇すると、同10月の世界選手権で銀メダルを獲得。さらに同12月のワールドマスターズではオール一本勝ちで初優勝を果たし、世界トップレベルの実力を証明した。
しかし、昨年は膝や太ももの怪我の影響もあり、個人戦では国際大会で無冠に終わってしまった。
「昨年の5、6月ぐらいですかね。技のかけ方を忘れてしまったというか、分からなくなってしまうくらいスランプに陥ってしまって。『これはまずいな』『本当にシャレにならないな』と思ったし、こんな状態でやっていけるのかと半信半疑でした」
最悪の状況の中、8月にはパリオリンピック代表に内定した。それまでの実績が評価された形だ。
「まだ決まらないだろうって思っていたのでびっくりしました。しばらく優勝から遠ざかっている状態で代表に決まったので、批判もされたし……かなり悔しかったですね。練習をしていても『俺でいいんか?』と考えることも何度もありました。そう思う一方で、『やっぱり俺しかおらんやろ』という気持ちもあったり。メンタル面でのダメージがかなり大きかったし、きつかった。今年3月のグランドスラム(GS)アンタルヤ大会の前までは引きずっていましたね」