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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
今年だけで「日本王者が3人」「パリ五輪代表も」…スポ薦なし“偏差値70の進学校”陸上部がトップ選手を続々輩出のナゼ…成功の源は「急がない指導」
posted2024/08/04 19:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
(L)AFLO、(C)Yuki Suenaga、(R)Hideki Sugiyama
パリ・オリンピック陸上競技の400mハードルに出場する豊田兼。
彼が卒業した東京・国立にある桐朋高校からは、2024年の大学入試で現役・浪人合わせて12名が東京大学に進学した。東京・多摩地区の住民にとって、桐朋といえばスポーツの学校ではなく、進学重視の学校である。
実は、私は桐朋高の学校説明会に出席したことがあり、これが素晴らしい内容で、感激したほどだ。当時の片岡哲郎校長は四季折々の桐朋の写真を見せ、「こういう環境で3年間を過ごせたら、本当にいいだろうなあ」と実感させてくれた。桐朋は中学までは制服があるが、高校は私服登校。国立の町を歩いていると、こざっぱりした桐朋生はだいたい分かる。
その桐朋に「異変」が起きている。陸上競技で!
豊田というオリンピアンが誕生しただけでなく、U20日本選手権の十種競技では、桐朋を卒業したての慶応大学1年生・高橋諒が優勝。8月27日からペルーで行われるU20世界選手権の代表に選出された。
さらには高校3年生の吉澤登吾が同じくU20日本選手権の800mで、日本高校歴代4位となる1分47秒80で優勝、こちらもU20世界選手権の代表に選ばれている。
いったい、桐朋になにが起きているのか?
偏差値70「進学校の陸上部」に何が…?
自らも走り高跳びで日本選手権2位の実績を持つ陸上部の顧問・外堀宏幸先生はこう話す。
「競技実績による推薦はありませんし、本当に豊田、高橋、吉澤と、偶然にも能力の高い生徒がいたというだけです。来年、吉澤が卒業したら、もう一度、私自身も指導を見直していくつもりです」
前編では豊田の成長過程をたどったが、外堀先生の指導方針は高校3年間での短期的な成功を求めるものではなく、将来的に大きく花開くための準備をするというものだ。
「中学時代の豊田は混成競技(※中学生は400m・110mH・走高跳・砲丸投の四種競技)に取り組んでいました。高橋も中学時代から抜群の能力を持っていたので、将来につながる土台を大きくする意味で混成競技を勧めました」
土台を大きくすれば、将来、より高いところへ到達できるかもしれない。その思いが日常の指導に表れている。