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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
今年だけで「日本王者が3人」「パリ五輪代表も」…スポ薦なし“偏差値70の進学校”陸上部がトップ選手を続々輩出のナゼ…成功の源は「急がない指導」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by(L)AFLO、(C)Yuki Suenaga、(R)Hideki Sugiyama
posted2024/08/04 19:01
パリ五輪代表の豊田兼(中央)をはじめ、ジュニア王者の高橋諒(左)、吉澤登吾(右)と今季日本王者を3人も輩出した桐朋高校陸上部
高橋は高校1年生でインターハイの八種競技を制し、昨年11月には高校記録を塗り替えた。混成競技は一般的になじみが薄いが、高校生の八種競技の場合、次のようなプログラムで進んでいく。
1日目:100m 走幅跳 砲丸投(6kg) 400m
2日目:110mH やり投 走高跳 1500m
外堀先生は高橋の特性をこう話す。
「中学1年の時から運動能力が高いのは分かりました。印象的だったのは、中1でまったく練習したことがないのに、ハードル間を3歩で跳んでいったことです。足が速く、一定の器用さがある。もし専門性を追求するならば、高橋は短距離種目の可能性も十分あったと思います。。
ところがそれだけではなく、跳躍、投てきも行ける。混成の選手は投てきが得意だと短距離が苦手だったり、どこかに偏りが生まれてしまうものですが、高橋の場合、あえて挙げるとするなら1500mがやや苦手というくらいで、正真正銘のオールラウンダーです」
6月に岐阜県で行われた十種競技のU20日本選手権で高橋は、次のような結果を残した。
1位種目 100m 走幅跳 走高跳 110mH 円盤投 やり投
2位種目 砲丸投 棒高跳 1500m
3位種目 400m
実に6種目で1位となっている。外堀先生も高橋の成長を素直に喜ぶ。
「大学に入ってから、棒高跳と円盤投に取り組まなければいけないので、その2種目が課題かなと思っていましたが、うまく適応しているようです。実は去年の秋から、高橋には好きに練習させていました。ひと冬くらい、自由にさせてもいいかと思いまして(笑)。大学に進んだら私が指導するわけではないですし、自分なりに考えて練習を組み立てた方が大学での競技生活につながると思っていましたので」
選手の自主性に任せる「潔さ」
高橋は慶応に進学が決まってから、大学に出向いて練習するなど、工夫を凝らしながら高校から大学へのトランジションを進めた。これも自主性の賜物だろう。
外堀先生の、本人に任せるという「潔さ」は現在高3の吉澤にも当てはまる。
吉澤は中学から桐朋に入学、中学2年の時に800mで1分台に突入し、全中で5位に入る(中2で1分台は相当の実力者である)。順調に成長を重ね、高校2年では1分49秒98にまでタイムを伸ばした。
今年のU20日本選手権では、なんと200m地点から先頭に立ち、そのまま押し切って優勝、タイムも1分47秒80にまで伸ばした。