濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
なぜマニー・パッキャオの“RIZIN初登場”は「期待外れ」に終わったのか？ 舞台裏では「いいチューンナップに…」安保瑠輝也戦を徹底検証
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/08/01 17:01
安保瑠輝也の攻勢にバランスを崩すマニー・パッキャオ
最大の要因は”体格差”だが…
最大の要因は、やはり体格差だろう。69kg契約で身長はパッキャオが166cm、安保が180cm。リーチ差も13cmあった。
ただ、それだけではないと安保は言う。
「体格差だけでどうにかなる相手じゃないので。足を機敏に動かして、相手が出てきたらその分だけ下がる。それもまっすぐ下がらず、よけながら打つ。そこでフィジカルを活かして距離を潰す。
駆け引きの段階で疲れさすというか“なかなかうまくいかない”と思わせて自分が前に出る。そういう勝負になると分かってたんで」
戦前の評価についての心境も語った。
「ボクシングをやってきた人たちのほとんどが1ラウンドで倒されるし一発も当たらないし一発殴られたら終わりみたいに言ってましたけど、それは絶対に覆してやると思ってたんで」
パッキャオのパンチが特別に強いとは感じなかった。想定通りだとも。さらにこんな言い間違いもしていた。
「体格を活かしたけど、体格だけで勝てたわけじゃない……いや勝ってはいないか。体格だけで勝負できたわけじゃない」
思わず「勝った」と言ってしまうだけの感触があったのだ。SNSにも「判定があったら安保の勝ち（パッキャオの負け）だった」という意見が目についた。RIZINのCEOである榊原信行も「安保の勝ちでも然り」と振り返っている。
「いいチューンナップになったよ」パッキャオの言い分
一方、パッキャオは「安保はタフで強くて、大きかったね」。KOできなかった理由についても「安保が大きかった」からだと語った。
リング上だけでなく、インタビュースペースでのパッキャオにも悪い意味で驚かされた。たとえばこんなコメントだ。
「今年のうちにリアルファイトがあると思う。それに向けていいチューンナップになったよ。いろいろ気付かされる部分もあって、いい機会になった」
パッキャオはボクシング本格復帰、世界ウェルター級王座挑戦の交渉中だと言われる。安保戦はそのための調整というのは本音なのかもしれない。しかしあんまりな言いぐさじゃないかとも思う。
