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パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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photograph byJMPA

posted2024/07/28 11:30

パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」<Number Web> photograph by JMPA

エマニュエル・マクロン仏大統領とIOCのトーマス・バッハ会長。パリ五輪開会式の「成功」に満足げな笑みを浮かべる

記者が実際に体験した「地下鉄での不審物騒ぎ」

 パリの街に緊張が走ったのは開会式当日の朝だった。フランス国鉄が、パリへとつながる鉄道網の3箇所で信号設備の破壊行為が行われたと発表。同国鉄はSNSで旅行者に向けてメッセージを投稿し、「できるかぎり旅行を延期し、駅に行かないようにしてほしい」と安全最優先のアナウンスをするほどだった。

 異例の形式で行われる開会式を前に、パリの街はもともと厳重な警戒感に包まれていた。開会3日前から現地入りしたが、目につくのは警察官の多さ。特に開会式が行われるセーヌ川の通り沿いでは街の一区画ごとに警察官の集団、または迷彩服を来た軍人が巡回している。

 市内を歩いていると、おおよそ15分に一度の頻度でパトカーのサイレンが鳴り響く。「NATIONALE」の文字が記されたフランス警察の車両が一般車両も観光客も代表選手も押しのけて、通り過ぎていく。今のパリの日常だ。

 たった3日の滞在でも、警戒度の高さを思い知らされる出来事があった。

 開会式を翌日に控えた25日の朝9時、バレーボールの会場をあとにして、凱旋門の西側にあるメインプレスセンターに向かう道中。地下鉄8番線「Balard」駅の改札に入った瞬間だった。前方にいた駅員が「通せんぼ」をしてフランス語で何か叫ぶ。すぐさま折り返し改札を出た。

 改札に入る前、笑顔でハリセン型の簡易トラベルガイドを渡してくれたアフリカ系のスタッフが、真剣な表情で背中に手をやりながら出口を指差す。

「フランス語喋れますか?」と英語で聞かれ、首を横に振った。すると、英語が得意ではないようで、申し訳なさそうにしながらも、「まずはすぐに駅を出てくれ」と身振り手振りで説明された。改札口付近ではスーツを着た男性や高齢の女性などがスタッフにフランス語で詰め寄っているが、皆納得したように、出口へと歩いて引き返していく。筆者も誘導に従い、駅スタッフを背に地上を目指す。

 地上出口には駅スタッフと乗客となるはずだった人たち50名ほどが立ち尽くしていた。一体何が起きたのか。地上に出て、ポケトークを通して件のスタッフに聞いてみる。「危険な何かが見つかったということですか?」。声を吹き込むと頷く。そして理由を端的に答えてくれた。

「Colis suspect(不審なパッケージ)」

【次ページ】 「持ち主がわからない荷物は爆破処理される可能性も」

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