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パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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posted2024/07/28 11:30

パリ五輪「セーヌ川で優雅な開会式」のウラで…現地で記者が見た“平和とは真逆の現実”「5分おきにパトカーのサイレン」「地下鉄で不審物騒ぎ」<Number Web> photograph by JMPA

エマニュエル・マクロン仏大統領とIOCのトーマス・バッハ会長。パリ五輪開会式の「成功」に満足げな笑みを浮かべる

 この駅はパリ都心部を囲む環状道路の南端に位置している。開会式の会場とも遠く、少し落ち着いたエリアだ。ただ警察官複数名がパリ中心部のあらゆる駅に配置されており、その捜査網に引っかかったのが「不審なパッケージ」だった。

「持ち主がわからない荷物は爆破処理される可能性も」

 この厳戒態勢や“不審物騒ぎ”は観光客にとっても他人事ではない。自身の荷物が不審物と認定された日本人男性(33)が明かす。

「パリの市庁舎脇に五輪の特設ブースがあったのを見て、日本の感覚でスーツケースをベンチに置いたまま、10分ほどそのパビリオンを見に行っていたんです。それで戻ってきたら、周辺に赤白のテープと一部はバリケードが張り巡らされて、封鎖されていて……。他の観光客も入れなくなって、困っている様子でした。聞くと『不審物が見つかった』というから、『僕の荷物が中にあるんだ』というと、警察官に取り囲まれ30分ほど待機することに。爆弾処理班と一緒に荷物を確認して、ようやく荷物が戻ってきました。『絶対荷物を手放してはいけない』と注意を受けました」

 ちなみに「持ち主が見つからない場合は10分程度で爆破処理される可能性もある」(フランス在住のジャーナリスト・広岡裕児氏)という。日本の「ちょっと荷物を置いていても問題ないだろう」という感覚はまずもって通用しない。

 総勢7万5000人とも言われる厳重な警備。担っているのはフランス警察だけではない。警備にあたっている警察官が語る。

「セーヌ川周辺の警備のためにフランス各地域の警察だけでなく、スペインや韓国などいろんな国から応援が来ています。テロ警戒の最も重要な部分はフランス警察が担いますが、それによってエアポケットとなってしまったエリアを他国の警察がカバーするという態勢だと聞いています」

 エッフェル塔から400mほど南西のビル・アケム橋。夜になるとカップルが行き交うデートスポットにはたくさんの警察官の姿があった。といっても、職務中ではなく、休憩中。服装についた腕章などからパリ市警ではないようで、フランス語をかわしながら、エッフェル塔を背景に思い思いにセルフィーや集合写真を撮っている。同じフランス人でも、パリ市民以外からすれば、エッフェル塔は記念撮影したくなる象徴なのだと思い知る。

 だが、そんな観光名所の数々も、五輪開催のあおりを受けて気軽にアクセスできない状況となっている。外国から訪れた観光客の本音や、市民たちの「パリ脱出計画」とは? 平和の祭典のウラ側をさらに掘り下げていく。

<続く>

#2に続く
パリ五輪“あの開会式”のウラで観光客が悲鳴「家族連れが警察官に追い返され…」セーヌ川付近はゴーストタウン化「市民は“パリ脱出計画”も」

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