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パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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posted2024/07/24 06:00

パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2027年から9競技の廃止が決まった全中=全国中学校体育大会。少子化の続く日本で、この決断はどんな影響を生むのだろうか

 全日本スキー連盟は「正直、すごく困っている。(少子化を含む)大きな潮流は理解しているが、中学生にとって大きなモチベーションになっている大会。競技普及や選手強化に大きな影響が出る」と述べた。

 部活の設置率が男子7%、女子6%と低いハンドボールでは、事務局長から祈りに近いコメントが出た。「1人のスーパースターで変わることもある。野球は大谷翔平選手、卓球は福原愛さんが引っ張ってきたように。ハンドボールも代表をどう強化していくかを考えることが、遠回りのように見えて近道かもしれない」

 厚生労働省によると昨年生まれた子どもの数は約75万8000人(速報値)で、2年前から4万人以上も減った。今後も中長期的な減少が予想されているだけに、全中大会で「残留」する競技の立場も安泰ではない。

「学校教育の一貫」部活がなくなる日

 部活動に関わる関係者が注目しているのが、中学校の学習指導要領の改訂だ。現在は部活動について「学校教育の一環」と記されているが、ある関係者は「改訂後は部活の文言が消えるという話がある。そうなれば、いよいよ部活の存続は危うい」と危機感を口にした。

 学習指導要領に記載されなくなれば、学校側が部活を設置する根拠がなくなりかねない。学習指導要領はおおよそ10年ごとに刷新されており、次の改訂は2029年3月ごろとみられている。

 現在は中学校の運動部活動の地域移行推進や、国民スポーツ大会(旧国民体育大会)の縮小を巡る議論が活発に行われているが、こうした動きも全中大会の改革と同様、背景には少子化と教員の働き方改革推進がある。時代の大きな流れに、日本全体のスポーツ活動が影響を受けている形だ。

 かつて、イチローは言った。

「壁がある時はチャンスだと思っている」

 全中大会からなくなる競技にとっても、同じことが言えるのではないか。引き金は少子化のさらなる進行か学習指導要領の改訂かは分からないが、遅かれ早かれ部活動は今の状態を保てなくなり、全中大会はさらなる縮小か廃止を検討せざるを得ないと考える関係者もいる。それなら、傷口が浅いうちに次の一手を打った方がいい。実際、競技団体の中には中学生年代の大会を新設するなど、さまざまな動きが出始めている。

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