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パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/24 06:00
2027年から9競技の廃止が決まった全中=全国中学校体育大会。少子化の続く日本で、この決断はどんな影響を生むのだろうか
日本体操協会の審判委員会にも所属した千葉一正さんだ。指導歴30年以上の大ベテランで、現在は仙台市の西多賀中と長町中で指導している。千葉さんは中学生にとって全中大会が目標であることの意義を説いた上で、「新設大会をどう位置づけるかが重要」と言う。
「全中大会では地方ブロック予選を勝ち上がって出場できるようにしてきたが、新設される大会もブロック大会を予選に位置づけるかどうかが重要。今は市町村の大会、都道府県大会、地方ブロック大会、全中大会と道がつながっている。全国へのルートをなくさないよう、要望を出している」と話す。
千葉さんによると、15年ほど前は3学年合わせて50人以上の部員がいたこともあったが、現在は半減。
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「体操はもともと、あまり部員が多く入ってくる部活ではないが、今は少子化の影響でさらに減っている。全国大会へのルートがなくなってしまうと、子どもたちのモチベーションや部員数にも影響が出てしまうかもしれない。体操部自体が廃部になる傾向が出るのではないかと、心配している」
「地殻変動のはじまりに過ぎない」
冒頭でも触れた毎日新聞のコラムで、町田樹さんは今回の全中大会改革を「スポーツ界をめぐる地殻変動のはじまりに過ぎない」と予測。「各競技の統括組織は全中に依存しない競技運営の在り方を早急に模索すべき」と提言した。
中学生年代のスポーツ環境の整備は将来的なトップアスリートの育成につながるだけでなく、生涯にわたる健康なライフスタイルの確立にも寄与する。静岡県掛川市では、2026年8月から市内の中学校で部活動をすべて廃止し、地域クラブに移行させる計画がある。各競技団体は自治体とも連携し、中学生年代のスポーツ環境について考え直す時期を迎えている。