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パリ五輪は開幕でも…「全中9競技廃止」にみる“少子化日本”のスポーツ環境 現場のリアルな声は?「地殻変動のはじまり」「強化に影響出る」
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/24 06:00
2027年から9競技の廃止が決まった全中=全国中学校体育大会。少子化の続く日本で、この決断はどんな影響を生むのだろうか
既にハンドボールでは、部活ではなく地域クラブが主体の「全国中学生クラブカップ」を開催している。全中大会からハンドボールが消えた後は、この大会が部活の受け皿にもなれるよう、日本協会側は中体連の協力を仰ぐ見通しだ。
日本体操協会も以前から中学生年代の育成強化について議論を重ねており、2026年度に体操の新たな大会を立ち上げる方針。新体操は今年12月の大会を全中大会に代わる強化の場に位置づける。
中体連の発表を受け、水泳や相撲、スキー、スケート、アイスホッケーの各競技団体幹部も新たな受け皿の整備に取り組む方針を示した。全中大会に女子のみが残るソフトボールでも、日本協会の幹部は「将来的に女子もなくなる方向で考えないと」と新たな方針を探り始めている。
元五輪王者の見解は?
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元五輪王者にも話を聞いた。ノルディックスキー複合男子で1992年アルベールビル、1994年リレハンメル両五輪団体金メダルメンバーの河野孝典さんだ。現在、全日本スキー連盟で強化責任者を務めている河野さんは、中学生年代の大会新設について「種目ごとに分けて考える必要がある」と言う。
「全中大会ではアルペンスキー、クロスカントリー(距離)、コンバインド(複合)、ジャンプの4種目をやっているが、日本が五輪でメダルを取ったことがあるのはほとんどがコンバインドとジャンプだけ。アルペンスキーとクロスカントリーは、そもそもの強化の方法を考え直すいいタイミングになる。フリースタイルスキーとスノーボードは全中大会で実施していないのに、日本は強い。そこは現在のやり方を変える必要はないのかもしれない」
今回の改革をきっかけとし、強化を一から見直そうという考え方だ。
中学生年代を育成するため長年指導に携わってきた、ベテラン指導者にも取材した。