核心にシュートを!BACK NUMBER
河村勇輝が挑むNBAエグジビット10の過酷さ…「あそこは『チームが勝てばいい』なんて、誰一人思っていない」それでも感じる“無限の可能性”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2024/07/08 17:01
NBAグリズリーズとエグジビット10契約を結ぶことが発表された河村勇輝。海外挑戦前のパリ五輪でどんな活躍を見せるか
一方で、チームが勝つために自分が得点しないといけないと判断すれば、迷うことなくリングに向かってアタックできるのもまた河村の強みであることを忘れてはいけない。NBAの挑戦は、河村のバスケ観にも大きな影響を与えるはずだ。
もちろん、海外挑戦のために準備はしっかりしてきた。昨年2月、ダジャレを好む帰化選手のジョシュ・ホーキンソンが日本代表に選ばれると、河村はこうお願いしたという。
「英語を教えてほしいな」
あえて英語を教えてもらえなくても、バスケについての話をしていれば、自然と日本語だけではなく英語も交じることになったようだ。今ではその手のコミュニケーションが板につき、取材の席でも英語が出るときがある。
もちろん、肉体改造も進めている。シュートのときの肩の動きの連動性から、上半身と下半身の連動性の強化を図ってきた。さらには大男たちと競り合うための、重くて、強い身体づくりにも取り組んでいる。そうした成果が試されるときがいよいよやってくる。
舞台はアメリカ以外にも…? 河村の向かう先
確かに、現代では本場NBAは個人能力がずば抜けている選手たちによる、超人バトルの様相を呈している。Gリーグの舞台で活躍してNBAのチームへと登りつめるためには、富樫が指摘するように、もっとエゴを出して、自ら得点をすることにフォーカスしていくべきなのかもしれない。
一方で、W杯王者ドイツのいるヨーロッパでは、個人の能力よりも戦術的な発展が見られる。あるいはチームとして勝つことに並々ならぬ闘志を燃やす河村にとってはヨーロッパの方が合っているのかもしれない。
そもそも、河村はこれまで「NBAへの挑戦」を掲げてきたわけではなく、「海外への挑戦」を公言してきた。当然、本人がそうした違いはしっかり理解しているはず。田臥勇太、渡邊、八村塁に続いて4人目のNBA選手になるかもしれないし、ひょっとしたら今回の契約を機に、ヨーロッパで戦う選択肢もあるかもしれない。
可能性は、無限にある。
今回の契約は、河村のプロキャリアの第二章となる海外挑戦編の幕開けを告げるものである。だからこそ、第一章をどのような形で終えるのかが重要になる。そして、その締めくくりが今月末から始まるパリ五輪になるのだ。