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河村勇輝が挑むNBAエグジビット10の過酷さ…「あそこは『チームが勝てばいい』なんて、誰一人思っていない」それでも感じる“無限の可能性”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2024/07/08 17:01
NBAグリズリーズとエグジビット10契約を結ぶことが発表された河村勇輝。海外挑戦前のパリ五輪でどんな活躍を見せるか
「あそこでは、みんなが自分のスタッツだけを求めてやっていました。『チームが勝てばいい』なんて、誰一人として思っていないので。最初の頃は、自分の前がちょっと空いたとしても、他の選手が完全にフリーだったらパスを出していたんです。そうしたらコーチから『ここは他のリーグとは違うんだ。パスを出したら返ってこないんだから、自分で打てよ!』と言われて。もちろん、チームプレーも上手くできないとダメなんですけど、『個人的な結果を残せなかったら意味がない』と。あそこで結構、意識は変わったかなと」
もともとは味方を活かすのが上手だった富樫が、強気のドライブや、積極的に放つ3Pシュートを武器に、得点力のあるPGとして活躍するようになった原点もそこにある。
先輩・富樫が河村に抱いた「懸念」
実はそんな富樫は、今年2月、Bリーグの舞台で河村と対戦した際に、後輩の姿勢について心配していた。
「チームのプランなのか、彼の考えなのかわからないですけど(河村が)シュートなどに対してかなり消極的というか……今まで試合を見ていて、20~30本近く彼がシュートを打つ試合はあったと思うので、ちょっとビックリした部分がありました」
河村は日本代表入りすると、ホーバスHCからパスファーストではなく、シュートファーストのポイントガードになるように強く求められた。そして、昨年のW杯で、得点能力をいかんなく発揮した。だから「河村は完全に得点に目覚めた、意識が変わった」と富樫は感じていたのだろう。
ただ、河村自身は冨樫と対戦した約2カ月前、31得点しながら敗れた秋田ノーザンハピネッツとの試合を機に、考えを少し変えていた。
「僕がマインドを変えたのは、秋田でのGAME1を終えてからなので。あの試合では30点くらいとりましたけど、それでも(オフェンスが)上手く回らず、チームとして勝てなかった。得点王などを狙っているという意識は全くなくて。ただただチームが勝つために自分がすべきことをしたいんです。今はアシストが増えていることがチームに良い影響を与えているので、そこをやっていければ」
河村は心の底からバスケを愛している。
バスケは1対1で行なわれる競技ではなく、チームスポーツだ。一人で50得点しようが、負けることもある。チームスポーツであるバスケを愛しているからこそ、とにかく勝ちたい。河村はそう考える。だから、得点にこだわらないことがある。