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河村勇輝が挑むNBAエグジビット10の過酷さ…「あそこは『チームが勝てばいい』なんて、誰一人思っていない」それでも感じる“無限の可能性”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2024/07/08 17:01
NBAグリズリーズとエグジビット10契約を結ぶことが発表された河村勇輝。海外挑戦前のパリ五輪でどんな活躍を見せるか
これまではあまり見られないアクションを起こしたのは何故なのか。試合後にそう問うと、河村は明確な意図を明かした。
「ヘッドコーチのトム(・ホーバス)さんから言われていた通り、パッションのところです。自分は元々そういうタイプでは無いですけど、そういった『良いボディランゲージ』でチームを少しでも鼓舞できればいいなと思いました。ファンのみなさんも盛り上がってくれればと思ったので、それも良かったです」
河村の言う「良いボディランゲージ」は、日本のファンを喜ばせるためだけではなく、アメリカで厳しい戦いを勝ち抜いていくためにも欠かせないものだ。それはまるでNBAで6シーズンにわたってプレーしてきた渡邊のようなアクションだった——。
河村が結んだ「エグジビット10」契約とは?
河村がエグジビット10契約を正式に結ぶのは、パリ五輪が終わったあとの9月になる予定だ。エグジビット10契約では最低年俸が支払われるだけで、トップチームに残れるような保証もない。ただ、トレーニングキャンプには参加できる。NBAでは本契約選手を含めて21人がキャンプに参加できるので、貴重な21人の枠に入ったことを意味する。
この契約形態は2017年に導入されたもので、いきなりドラフトで指名されてNBAのチームに入れるわけではなくとも、将来性のある選手がNBA入りの足がかりとして活用できる制度だ。
また、この契約は各チームに3枠ある2ウェイ契約に切り替えることも可能だ。2ウェイ契約を結べば、NBAのチームとその2軍に当たるGリーグ所属のチームとを行き来できる。そうすれば、Gリーグで成長しつつ、その成長度合いによってNBAでプレーするチャンスを容易に得られるようになる。渡邊もかつて、エグジビット10契約から2ウェイ契約を勝ち取り、最終的にNBA選手の証である本契約を結んだことがある。
一方、日本代表の馬場雄大も2019年にダラス・マーベリックスとエグジビット10契約を結んだが、このときはNBAのコートに立つことは出来なかった。河村の進む道は決して平たんなものではない。
2014年、まだエグジビット10のような制度が存在していない時期、日本代表で河村と同じポイントガードを務める富樫勇樹は、マーベリックスでNBA入りを目指して戦っていた。ただ、現在のGリーグにあたる、Dリーグに参戦するとカルチャーショックを受けたという。